イギリスの認知症フレンドリーなビジネス環境づくり

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認知症にやさしいビジネス環境づくり

高齢化社会を迎えようとしているイギリスでは、ビジネスシーンにおいても認知症とその介護に関わる家族にやさしい環境づくりに取り組むところが出てきている。

アルツハイマーズ・ソサエティ(Alzheimer’s Society)が主催する認知症アクション・アライアンス(Dementia Action Alliance)では、2015年5月にリバプールで全国初めての「認知症にやさしいビジネス(Dementia Friendly Businesses Event)」を開催している。これはリバプール市の経営者を対象に、認知症の方々にやさしい環境がいかにビジネスの発展に役立つかというテーマで講演やワークショップが行われたものだ。

認知症を理解することで、より良い顧客サービスが可能になるとワークショップでは訴える。店頭でどう認知症の顧客に対するかというサービス事業者の役に立つだけではなく、例えば不動産開発事業者が、いかに認知症の家族を持つ家庭が生活しやすい街や建物をつくっていけるか、考えるきっかけにもなるという。

認知症という個人や家族の課題を、どう社会が受けて止めて「自然」な環境づくりをしていくか。福祉やボランティアという観点だけではなく、ビジネスの視点からも環境づくりに取り組むアプローチは合理的であり、必要だと感じる。

The Guardian紙の記事はこちら(Businesses Ignore the Dementia Time-bomb at Their Peril)。記事の題名の意訳は「経営者よ、認知症を無視するのは致命的なリスクです!」。

イギリスの高齢化問題に特化したインパクト・インベストメント

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高齢化対策に取り組む社会起業家を支援

日本は高齢化社会の先進国などと言われているが、高齢化社会への危機感は日本の専売特許ではない。イギリスでも今後20年間に大きな人口構成の変化が見込まれている – 85歳以上の人口は今の倍となり、65歳以上の高齢者は全人口の四分の一を占めるようになるという。

イギリスがおもしろいのは、高齢化のような課題に様々な社会起業家がユニークな方法で取り組んでいて、それを支援するエコシステムが出来上がってきているところだ。たとえば2012年に設立されたNesta Impact Investmentsは、高齢化社会の課題に取り組む社会起業家へ投資するインパクト・インベストメント・ファンドである。

2015年3月に発行されたレポートには、Nesta Impact Investmentの活動や投資先などが詳しく書かれている。特に焦点をあてているのが「認知症」の問題。現在、イギリスでは85万人が認知症に苦しんでおり、その数は2020年には100万人を超える。認知症を抱える本人もそうだが、実はサポートする家族などの介護者の悩みや苦しみは大きい。

こうした悩みや苦しみを一人で解決するのは難しい。社会全体で支援する仕組みが求められるが、国の支援には限界がある。ここに社会起業家による新たなイノベーションが求められているといえよう。Nesta Investmentは、社会起業家の新たな挑戦を支援することで高齢化社会に備えようとしている。もちろん市場としても高い成長が見込まれ、ビジネスとしても魅力的な分野だ。

「なるほど」と感じたのは、インパクト・インベストメントの必要性についての見解だ。国は高齢化社会対策に巨額を費やしているが、実はマクロ的な対策が多い。たとえば新しい治療の方法や診療に対する助成金などである。しかし、実際に苦しんでいる庶民に対する直接の裨益が少ない。国の手が直接には届かない庶民のサポートには、民間の起業家、社会起業家や投資家の役割が大きいとみており、インパクト・インベストメントの意義はその役割の一部を担うことだという。

実は、このファンドを運営するNestaはとても興味深い団体である。その紹介は回を改めて。

Nesta Impact Investmentのレポート:Remember Me(PDF)