ビールから始まるソーシャル・チェンジ

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ビールのラベルにメッセージ:The Guardianの記事より転載

「議論を促す」おしゃれな社会貢献ビジネス

バーや居酒屋での話題といえば、上司の愚痴や同僚の噂話が定番。うまいビールと酒を飲み交わし、気のおけない仲間たちと日々の憂さを晴らすのが、何といっても楽しい。ほろ酔い気分でリラックスし、心を素直にできる酒場は、人と人とをつなぐコミュニケーションの場としても魅力的だ。

そんな酒の席で、社会の課題について触れ、公平で夢のある未来について話し合うことも、わたくしたちの人生を豊かにしてくれるかもしれない。

女性の自立や移民問題など、社会の課題を解決することを目的に、オーストラリアの若い女性8人で立ち上げた新しい酒造会社会社が、Sparkke Change Beverage Co.である。自社のビール缶のラベルに、男女平等、セクシュアル・コンセント(性の同意)や移民問題などに関するさりげないメッセージを添えて販売する。

「Niples are Nipples(乳首は同じ乳首)」、「Consent can’t come after you do(やってしまった後では、『同意』はできない)」などのメッセージを、おしゃれなデザインと色で表現し、ビール缶ラベルに添えている。男女平等やセクシャル・コンセントに関する関心を高め、メッセージを機に人々が酒の席で議論することを期待している。

現在は他社の醸造したビールを仕入れて販売しているが、いずれ自社の醸造所を作る計画だ。酒造メーカーとして持続的なビジネスを広げながら、社会を変えていくプラットフォームをつくっていくことをビジョンに掲げているという。

「ソーシャル・エンタープライズ=社会課題を解決するためのビジネス」というと、何やら大げさで、かしこまったように聞こえるが、こうしたしなやかで、おしゃれな方法もある。ビールを傾けながら、人の幸せや公平な社会について話すのも悪くない。

Sparking change: social enterprise serves up feminism with beer and fashion/The Guardian/January 8, 2017

【未来都市】ベルリンのスポンジ・シティ構想

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ベルリン市の屋上緑化:Deutsche Welleホームページより転載

ドイツでは今世紀に入ってから、熱波や洪水が頻発している。2003年にヨーロッパを襲った熱波は、ヨーロッパ全体で5万人を超える死者を出し、ドイツでも7000人の犠牲を出す大災害となった。また2016年5月には、数時間で数ヶ月分の雨量を記録し、津波のような洪水がドイツの街を襲った。人々に甚大な被害を与える熱波や洪水の増加は、地球温暖化による気候変動が影響していると見る向きが多い。

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2016年のドイツでの洪水の様子:Deautsche Welleホームページより転載

こうした状況を受け、ベルリン市は2007年からスポンジ・シティ構想を推進している。

スポンジ・シティとは、街全体で雨水を吸収する都市設計のコンセプトである。例えば、ビルの屋上緑化や貯水タンクの設置により、熱波到来時には水の蒸発で表面熱を奪って暑さを緩和し、大雨のときには雨水を吸収して下水や河川に排水が過度に集中することを防ぐ。

ベルリン市は2016年8月にスポンジ・シティ構想を具体化するレポートStEP Klima KONKRETを公表した。屋上緑化や熱反射する壁色の推奨、アスファルト以外の地表割合の増加など、専門家の意見を集めて、今後のまちづくりの方針を示した。ベルリン市は2007年から気候変動に伴う熱波や洪水対策を議論してきたが、いよいよそれを実現する段階に入ってきた。

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StEP Klima KONKREのレポートより転載

スポンジ・シティのアイデアは、世界的には新しいものではない。日本でも、1981年、都会型洪水が多かった墨田区に新しい国技館を建設する際、洪水対策と雨水再利用のための巨大な貯水槽を国技館の地下につくった。洪水対策と雨水の再利用は「スポンジ・シティ」という言葉が生まれるずっと前から日本が取り組んできたコンセプトであるが、近年は関心が更に高まり、2014年に「 雨水の利用の推進に関する法律(平成26年法律第17号)」が制定され、2015年に「雨水の利用の推進に関する基本方針」が閣議決定されている

ベルリン市のこうした施策は、街の魅力づくりにも生かされる。街のスプロール現象(都心部から郊外へ無秩序、無計画に開発が拡散すること)を防止し、都市をより快適で生活しやすい場所にすることが目的だ。スポンジ・シティ作りは、今や次世代の都市に欠かせない要素となってきている。

Sponge City: Berlin plans for a hotter climate (Deutsche Welle: 7/22/2016)

 

【未来の社会】食糧を分かちあう冷蔵庫プロジェクト進展中

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コミュニティ冷蔵庫の様子(The GuardiansのHPより転載、写真Amy Hall)

国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界の食糧生産の三分の一は、人の口に入らずに廃棄されているという。先進国では、売れ残りや食べ残しなど、流通や消費段階で廃棄される割合が多い。いわゆる「食品ロス」と呼ばれる食糧の無駄づかいをなくすため、今、世界中のさまざまな組織や団体が取り組んでいる。

例えば、フードバンクの活動がある。規格外であったり、販売期限を過ぎたりして、通常では販売できない食品を集めて、福祉施設等へ無償提供する活動である。食べることは可能であっても無駄に廃棄される食品を、弱者支援に有効活用することが目的だ。米国ではフードバンクの活動によって、毎年200万トンの食品が有効活用されているという。日本でもセカンドハーベスト・ジャパンをはじめ、全国の11団体がネットワークをつくって活動している。

最近、市民の「分かち合う気持ち」をコミュニティで活かし、食品ロスの課題解決を貧困者支援と結びつける活動が世界で注目されている。イギリスでは、サモーセット市が「コミュニティ冷蔵庫」のプロジェクトを開始した。公共の空きスペースに設置された冷蔵庫に、街のスーパーやレストランが売れ残った食品を入れると、だれでもそこから無料で食品を取り出せる仕組みだ。

冷蔵庫を置く場所代や電気代は市が助成するが、運営は町のボランティアが行う。食品を提供する側に守るべき一定のルールがあるが、安全性については食べる側の自己責任である。市民の分かち合う思いと貧困者の支援を求める願いが、相互の信頼関係の上で結びついている。

冷蔵庫を介して食糧を分かち合うプロジェクトはスペインで始まり、いまや先進国だけでなく、インドやアラブ首長国連邦にも広がっている。ボランティアの活動内容は、食糧提供に限らない。清掃会社が冷蔵庫をきれいにするようなサービス提供のケースもあるという。

「シェア(分かち合う)する」という発想は、独占するという発想と対極にある。こうした私たちのささやかな思いこそが、格差社会に抵抗する最後の拠り所となるにちがいない。

Greggs and M&S join movement to donate leftover food to solidarity fridges (The Guardians/2016年7月30日)

【エシカル】生殖系列細胞への遺伝子操作は許されるべきか

The Guardian紙のホームページより転載 Photograph: Alamy

The Guardian紙のホームページより転載 Photograph: Alamy

議論を呼ぶイギリス科学者の実験

幹細胞(分裂して自分と同じ細胞を作る能力《自己複製能》と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞)の研究を進めるイギリスの科学者が胎盤形成の謎を解くべく、生殖細胞の遺伝子を操作する実験の申請を当局に提出した。これを受けて、世界の科学者たちの間で賛否をめぐる大きな議論を呼び起こしている。

生殖細胞とは、卵子や精子、胚芽(受精後、細胞分裂を始めて8週間が終了するまでの状態)など生殖に関わる細胞である。人間の生殖細胞に対して遺伝子操作を行うことの是非は、数十年間に渡り議論されてきた。しかし、近年になって、Crispr-Cas9という遺伝子操作を極めて正確に行うことができる技術(ゲノム編集ツール)が開発されたことで、抽象的な議論ではなく、現実的な問題として擁護派と反対派が対立している。

今年の初めには、このゲノム編集ツールを使い、中国で86人の人間の胚芽の遺伝子を操作する実験が行われた。これは世界で初めて生殖細胞の「編集」を行った事例である。ベータ・サラセミアという貧血症の一種の原因を解明することを目的としたとのことだが、賛否両論の激しい反応を引き起こした。

賛成派は、遺伝的な病気を世界からなくすための画期的な一歩だと讃える。一方で反対派は、人間の遺伝子操作は人類に対して想像できないほどの破滅的な悪影響をもたらすと警笛を鳴らす。

The Guardian紙の記事によれば、遺伝子操作が期待される適用領域は3つのカテゴリーに大きく分類される。一つは血液疾患や肺疾患などの遺伝的な病気の治療に使おうとするもので、適用範囲が最も広く、多くの科学者に支持されている分野である。二つ目が今回の実験が含まれる分野で、人間の生殖細胞や胚芽に関する基礎研究に使うものである。最後に不妊治療や体外授精に遺伝子操作の技術を適用することも期待されているが、この分野は科学者の間で最も意見の分かれるところである。

慎重派の科学者たちの意見では、胎盤に対する遺伝子操作は基礎研究にとどまる分には認めることができたとしても、実際の医療行為に応用することは現段階では絶対にゆるされるべきではないとする。最大の懸念は、ある遺伝子の変更がどのような副作用を起こすか予想できないことだ。予想できないまま、変更された遺伝子が引き継がれていくことで、将来、どんな悲劇をもたらすかわからないと警告する。また遺伝子を操作して親の望むような子供を産み分けるようなことにも、倫理上の観点から強く反対する。

胚芽に対する遺伝子操作のあり方について議論する国際会議が2015年12月に米国の国立科学アカデミーと国立医学学会の主催で、ワシントンD.C.で開催される予定である。

Scientists want to edit human embryo genes: Washington Post/Sept 18, 2015
UK scientists seek permission to genetically modify human embryo: The Guardian/Sept 18, 2015

【平和構築】モザンビークで地雷完全撤去宣言

The Halo Trust のホームページより転載

The Halo Trust のホームページより転載

モザンビークの地雷が完全撤去

昨日(2015年9月17日)、モザンビーク政府は最後の地雷が破壊され、国土から地雷が完全に撤去されたことを宣言した。

モザンビークは、1975年の独立戦争とその後の15年間に及ぶ内戦を通じて、大量の地雷が全国に撒き散らされ、世界で最も地雷の多い国の一つとなった。犠牲になったのは一般の人々だ。地雷で亡くなった人の数は少なくとも10,000人から15,000人と言われているが、正確な数字は不明だ。手足を吹き飛ばされ、身体の障害を抱える人々も数知れない。戦争が終了した後も、残された地雷は人々の生活を脅かし、経済の成長を妨げてきた。

この地雷撤去に長年取り組んできたのがイギリスの人道的な地雷撤去を目的にしたThe HALO Trustである。内戦が終了した1993年から20年間にわたり、171,000個の地雷を破壊してきた。20年間で延べ1600名のスタッフを雇い、地道に地雷撤去の仕事を続けてきたという。

Mozambique declared landmine free/Reuters/September 17, 2015

地雷が撤去されたことのインパクトは大きい。人口2600万人を擁するモザンビークは農業国であり、安全な農地が増えることで生産は高まり、産業を支える道路や橋などのインフラづくりも進むことになった。また石炭と天然ガスといった資源採掘への道も開き、外国投資も増えている。モザンビークは、現在、年7〜8%の経済成長を持続しており、今後も高い成長が見込まれている。

地雷に苦しむ国々は、まだ多い。アフガニスタン、カンボジア、ラオス、ジンバブエ、スリランカなど、The Halo Trustが活動する地域だけでも15カ国ある。地雷撤去は、命をかけた危険な仕事で、ビデオ: Joueney to Mine Free Mozambiqueからもその緊張感と凄まじさがひしひしと伝わる。次に地雷の完全撤去が宣言されるのは、2017年のソマリランドだということだ。道はまだ遠く、険しい。

【エシカル】魚の養殖はエシカルか

The Guardian紙のホームページより転載 Photograph: David Cheskin/PA

The Guardian紙のホームページより転載 Photograph: David Cheskin/PA

魚の養殖の増加

世界の海の生物が半減している中、魚の養殖が大きく増加している。実に過去30年間に12倍の生産量となっている。同じ期間の天然産の漁獲量伸び率が35%であるから、その大きさが理解できるであろう。FAO(国連食糧農業機関)が発表した報告書(Fish to 2030: Prospects for Fisheries and Aquaculture)によれば、現在、わたくしたちの食卓に上る魚の半分が養殖であり、この割合は2030年には60%まで上昇すると見込まれている。

実際、スーパーで買い物をすればわかる。鮭などではチリ産の養殖が占め、天然産の方が珍しい。東南アジアではエビの養殖が盛んで、その多くが日本の市場に届けられる。世界的にまぐろ需要が高まっており、その養殖技術の成功が世間の耳目を集めている。

この養殖により、私たちは低価格で魚を食することができている。世界人口の増加に対応する食糧を確保する上で、魚は動物性タンパク源の一つとして、これからも重要な食糧資源となるであろう。過剰な漁獲を抑え、天然資源の保存に役立つことが期待される。

養殖はエシカルか

しかし、こうした魚の養殖に対して、批判的に見る見方もある。その理由の一つが養殖に必要なエサである。水中のプランクトンなどを食する魚介類であれば良いが、肉食の魚だとエサを用意する必要がある。このエサのために、大量の魚が海から捕獲され、エサに利用されているのだ。

養殖による病気の蔓延や、自然環境の破壊が指摘されている。エビの養殖は塩水を引き込むため、地下水の汚染や土地の塩害が起きており、社会的な問題となっている。被害を受けるのは、そこに住む貧しい住民である。

養殖業者は、こうした批判に応え、改善を図ってきた。その顕著な例がサケ養殖であり、今や1キロのサケを養殖するのに、1.4キロ以下のエサで足りるところまでエサの効率性が高まってきている。牛を1キロ育てるのに10キロのエサが必要であることと比較すると、実に効率的であると言える。サケの養殖にかかるコストの60%がエサ代なので、このエサの効率性改善はビジネスの成否にも関わってくる。

世界最大の食糧関連企業のカーギル社は、この効率的なエサを開発したノルウェイのEwo社を買収した。この技術を魚の養殖だけでなく、養鶏にも使おうとする戦略のようだ。

出典:Farmed fish could bring us cheaper food, but is it ethical? (the Guardian/Sept.1, 2015) 

【生態系】海の生物の大幅な減少が問いかけるもの

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WWFホームページより転載

海の生物が過去40年で半減:WWF報告

世界自然保護基金(World Wildlife Fund、WWF)が昨日発表したLiving Blue Planet Report: Species, Habitats and Human Well-beingによれば、全世界の海の生物数は1970年から現在までの40年間で半減したという。これは海に生息する1,234種5,829個体群(哺乳類、鳥、爬虫類、魚)の動向を分析した結果で、多くの生物がその数を減らしている上に、絶滅の恐れのある種が増えているという。

これほど多くの生物数が減少した原因は、人間の営みにある。報告書によれば、過剰な漁獲、環境汚染、地球の温暖化などが複合的に絡まって生態系を破壊しており、生態系を育み守ってきたサンゴ礁や海藻も急速に失われつつあると分析している。

無尽蔵と思われていた海の生物資源が半減したということは、ただごとではない。人類は何十億年とかけて地球が育んできた海の生物をたった40年で半分も食い尽くしたのだ。漁業に頼る人々の生活が脅かされ、安定的な食料供給源を失うことは人口増加が続く未来に影を落とす。生態系の破壊は、海の浄化作用の悪化や、地球温暖化のさらなる加速にもつながっていく。海という巨大な生態系の損失が引き起こす破壊の連鎖は、計り知れない。

関心をもつという抵抗

しかし、より本質的な問題は、自然環境やエコロジーの破壊といった危機に対して、人類がそれを解決する有効な手法を見いだせていないということではないか。私たちは、自然の治癒力をはるかに上まわる破壊力を自らつくりあげながら、その無軌道な暴走をコントロールすることができずにいる。ありあまるほどの情報を手にしていながら、破壊に加担しているという明確な意識さえ持てない。世界はクジラの捕獲には声高に反対するけれども、その他の海洋生物については目に入らない。サメやナマコの激減に誰が関心を持つだろうか。

こうした破壊の力は、私たちの無関心を糧に勢いを増してきているように思う。無関心こそが、破壊力に栄養を与えているのだ。性急な答えを見出そうとすることは無理であろうし、そうすべきでもないと思う。しかし関心をもつことで、ちょっとは抵抗できるかもしれない。これは今の世代に生きるものとして、せめてもの罪滅ぼしでもある。

【環境】グリーンケミストリーの動向

グリーンケミストリー(Green Chemistry)とは

グリーンケミストリーという言葉は、日本では一般にあまり馴染みがないものかもしれない。化学物質による環境汚染を防止し、生態系や人体への有害な影響を最小限に抑えることを目指した化学のことで、1990年代からアメリカを中心に提唱され、世界的に広がったコンセプトである。

このグリーンケミストリーの中核をなす考えは、Paul AnastasとJohn Warnerが1998年に発表したGreen Chemistry: Theory and Practiceという著作の中で提唱した12原則(12 Principles of Green Chemistry)にある。原則の中には、廃棄物はできるだけ出さない(第1原則)、無害な化学製品の設計(第4原則)、有害な溶剤や補助剤をできるだけ使わない(第5原則)といったものが含まれる。詳しくは、以下のサイトをご参照願いたい。

米国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency):Basic of Green Chemistry

日本では1999年にグリーンケミストリー研究会が日本化学会の中に結成され、2000年には産官学連携による「グリーン・サステナブル ケミストリー ネットワーク」が設立されて、現在GSCN会議として、新化学技術推進協会の中で活動が展開されている。

グリーンケミストリーをめぐる新しい動き

グリーンケミストリーは米国に始まり、欧州や世界各国で具体的な法や規制となって形を成してきたが、産業界における推進の動きは遅かったと言われている。Green Chemistry & Commerce Councilが2015年3月に公表したAdvancing Green Chemistry: Barriers to Adoption & Ways to Accelerate Green Chemistry in Supply Chainsによれば、その原因はグリーンケミストリーの定義が不確定なこと、サプライチェーンの複雑さ、新しい化学製品へ移行するためのリスクやコストなどが挙げられており、ステークホルダー間のより一層のコラボレーションや、小売や消費品メーカーからの要請、消費者への教育などを改善策として提言している。

そんな中、アメリカの大手小売チェーンや消費製品メーカーに新しい動きが出ている。例えば米国最大の小売チェーンであるWalmartやTargetといったスーパーで、グリーンケミストリー製品を購入する自主ガイドラインを2013年から導入している。政府による法や規制では合法でも、自社の基準にそぐわない場合には購入しないというもので、メーカーに対して強い圧力となる。またジョンソン&ジョンソンが自主的に有害とされるフタル酸エステルを使用しない方針を決めた。

A Toxic Situation: Walmart and Target take on Chemical Safety, The Guardian, 2013年12月13日

こうした動きは、今まで足踏み状態であったグリーンケミストリーの動きを加速することになるであろう。需要サイドからの圧力を受けて、生態系や人体に優しい、無害な化学品への技術革新やイノベーションが生まれる基盤が整いつつある。

【イノベーション】1ドル眼鏡から見える光景

Onedollarglassesのホームページページから転載

Onedollarglassesのホームページページから転載

シンプルさを追求したモデル

ドイツのOneDollarsGlasses Association(1ドル眼鏡協会)は、2012年に設立され、途上国の1億5千万人と言われる視力障害の人々に安価で質のいい眼鏡を提供することを目的に、世界9カ国で活動を展開している。スチールでできた眼鏡のフレームを現地で簡単に加工できるキットを提供し、度数に応じたレンズをはめ込むことで、原価を1ドルにおさえた眼鏡を生産できるモデルを考案した。

できるかぎり部品数を減らし、なおかつスタイリッシュなデザインを維持するため、創業者のMartin Aufmuth氏は2年近くの研究開発を自力で行い、ウガンダでのテストプロジェクトを皮切りに、事業を拡大してきた。今、活動地域はアフリカ各地、ラテンアメリカ、南アジアにも広がり、シーメンスの財団から”Empowering People Award”を受賞するなど、世界で注目を集めている。

協会の主な活動は、対象国の現地の人々に、1ドル眼鏡を生産するためのトレーニングを施すことと、販売網を開拓するための活動が中心である。また現地の販売員にとって、サステナブルな事業にするため、効率的な生産とバリューチェーン上におけるコストの削減方法についても、研究と開発を進める。

マーケティングについてはシンプル化と効率が重視され、検眼と眼鏡のカスタマイズを一度の訪問で完了できるシステムを考案した。通常であれば販売員は、検眼とカスタマイズされた眼鏡の納品のためにそれぞれ1回、合計2回の訪問が必要であるが、販売員が検眼後に、その場で眼鏡を組み立て、カスタマイズすることで1回の訪問で完了する仕組みになっている。

このモデルの核となっているのは、Bending Machineと呼ばれる眼鏡のフレームの成型器だ。電気も不要で、メンテナンスがほとんど必要なく、簡単な手作業でフレームが成形できる。あとは大量生産されたポリカーボネート製のレンズをはめ込み、顔の形に合わせてカスタマイズするだけである。ドイツ人らしいクラフトマンシップと合理的精神を追求したモデルといえよう。

Onedollarglassesのホームページページから転載

Onedollarglassesのホームページページから転載

事業としての持続性がこれからの挑戦

OneDollarGlassesは、2014年度のアニュアル・レポートを発行している。各国での活動の内容が記されており、興味深い。また活動の収支報告書も掲載されており、収入と支出の内訳もディスクローズされている。

収入の大半は寄付金で、総収入70万ユーロ(約1億円)の93%に上る。その他も賞金などが収入源となっており、事業からの収入は非常にわずかだ。一方、支出は人件費、旅費、キャンペーンなどの広告宣伝費が約4分の3を占めている。収支を見る限り、寄付金頼みのNGOと似ているようだ。

こうした事業が、本当の意味でサステナブルといえるようになるためには、おそらく多くのイノベーションを必要とするだろう。「ソーシャル」や「サステナビリティ」という言葉が喧伝され、「ビジネス」や「インベストメント」というコンセプトが加わって新しい道筋が模索されているが、道のりはまだ険しいように感じる。

OneDollarGlassesのような団体にブレークスルーを期待したい。

【未来の社会】2100年の世界の人口状況

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人口動向が変える世界の姿

2100年の世界は、どうなっているだろうか。無数の変動要因がある中で、比較的予測がつきやすいのは、人口動向である。このほど、国連は2100年の世界の人口動向に関する調査レポートを公表した。その内容は内容はなかなか衝撃的である。

World Population Prospects 2015 Revision Key Findings & Advanced Tables

世界人口の39%がアフリカ諸国に

レポートによると2015年7月現在、世界人口は73億人に上っている。その内訳はアジアが最大で44億人で60%、アフリカが12億人で16%、ヨーロッパが7.4億人で10%、ラテンアメリカが6.4億人で9%、北米などその他地域が4億人で5%といった内訳だ。これが2100年には総人口が112億人に増加し、特にアフリカの人口増加が突出して高く、全世界人口の39%を占めるようになる。

出典:国連World Population Prospect 2015 Revision のデータにより筆者作成:単位百万人

出典:国連World Population Prospect 2015 Revision のデータにより筆者作成:単位百万人

上位9カ国で全人口増の半分を占める

2050年までの動向を見ると、以下の9カ国で世界の人口増の半分を占める。顕著な人口増加を示すインドは7年後の2022年には中国を抜いて世界最大の人口を抱える国となる。アフリカではナイジェリアの増加が大きく、コンゴ、エチオピア、ウガンダ、タンザニアといった国々も大きく増加することが見込まれている。

出典:国連World Population Prospect 2015 Revision のデータにより筆者作成:単位百万人

出典:国連World Population Prospect 2015 Revision のデータにより筆者作成:単位百万人

高齢化が進む世界

レポートで示されていたもう一つの顕著な特徴は人口の高齢化である。特にアジアや欧州での高齢化が進み、日本を含めた数カ国では人口の大幅な減少が見込まれる。現在、世界の年齢の中間値は29.6歳であるが、2050年には36歳になり、2100年には42歳になるという。

この予測は、もちろん様々な変動要因を含んでいるので、この通りになるわけではないが、今世紀はアフリカの台頭が世界に大きな影響を与えてくことだけは確かだ。