「スマートシティ型」民主主義のパイロット
ネット社会が普及し、IoTの環境が成長する中で、民主主義の形は変化するであろうか。そのことを考えるヒントとなる試みが、パリやレイキャヴィーク(アイスランドの首都)で行われている。市民がネットを通じて公共事業の提案を行い、投票し、予算の使い方を決めていく。
パリのプロジェクトの名前が面白い:Madam La Maire, J’ai Une Idee(知事さん、私はアイデアを持っています!)。レイキャヴィークの方は、Better Reykjavik(より良いレイキャヴィークをつくろう!)である。どちらもネットでつながった社会で市民の直接の参政権の可能性を探っている。
パリの場合は、2014年から開始した6年間の長期プロジェクトで5億ユーロ(約675億円)の予算を割り当てている。現在までに5000を超えるアイデアが寄せられている。因みに今までで最も人気が高かったアイデアは市内41カ所の建物の壁を使った垂直ガーデン(Veriticle Garden、右の写真)で、市民から21,000票を得て、2百万ユーロ(約2億7千万円)の予算が投入され実現している。
予算の配分の仕方もユニークだ。パリを20の区画に分け、郊外の貧しい地域には、市内中心地より15倍の予算が振り分けられており、社会的弱者への配慮に重点を置いたものとなっているが特徴的だ。
Madam La Maire, J’ai Une Ideeのホームページはこちら。
レイキャヴィークの場合は、ホームページに市民がアイデアを投稿すると、市民の関心の高いアイデアについては議会で取り上げ、予算を振り分けるかどうかを議論する。既に200近くのアイデアが採用され、1.9百万ユーロ(約2億6千万円)の予算がつけられたという。
Better Reykjavikのホームページはこちら。
ホームページを見ると市民と市の行政が丁寧に一つ一つを吟味している様子がわかる。あるアイデアが投稿されるとまず市民がネット上で賛否を議論する。例えば、学校にもっと創造的なカリキュラムを導入すべきだと言う意見を出す人がいれば、それに対して賛否が出される。Nestaの記事によれば、市民の60%が一度はこの議論に参加しているという。
関心が高いアイデアに関しては、市議会の委員会に議事として採択される。そこでの議論などは議事録という形で市民に公開され、アイデアを実施するとなれば、予算がつけられる。自転車にやさしい街づくり、ファミリーパーク前へのバス停留所の新設など、多種多様な意見が出ていて、市民のニーズを汲み取ることに役に立っていることがわかる。
レイキャヴィークの市民参加のためのホームページは、Your Prioritiesというオープンソースのプラットフォームで開発され、運営されている。市民が直接アイデアを出し、優先度をつけ、何を採択するかを決めるためのプラットフォームを提供しており、無料で世界中の行政府や団体が利用できる。エストニアでも導入され、5万人の市民によって2000のアイデアが寄せられ、その内15件のアイデアが議会で採択され、7件が既に法制化したという。
人々のニーズに照らして考えるとき、市民の政治への直接参加は大事なアジェンダになる。市民の声をより良く聞き、市政に生かすためのツールとして、こうしたプラットフォームは今後も増え、市民の市政への直接参加の流れは加速するであろう。スマートシティは、市民による意思決定の仕方に、大きな変革をもたらすことにある。技術のイノベーションが進むにつれ、私たちはおそらく未曾有の大衆政治の時代を迎えることが予想される。そのメリットとリスクを見極めていくことが、未来を創る私たちに問われている。



