スマートシティのあり方を考える
Nestaがスマートシティのあり方を考える新しいレポートを出している。本レポートでは、スマートシティの歴史とこれまでの事例を概観しながら、これからのトレンドとしてCollaborative Technologies(市民協調的技術)のコンセプトを紹介している。
スマートシティには、国や行政がトップダウンで決定し、高いコストをかけて推進するプロジェクトが多く、コストに見合う効果を出せない事例も少なからずある。また、ハードウェアの技術に重点が置かれる傾向があり、ともすれば実際の市民のニーズを見落とすこともある。今、世界で広がりつつあるのは、市民側からのイニシアチブでスマートシティをつくろうとする動きで、そのキーワードは「協調」「オープン」「ボトムアップ」であるという。
このレポートで紹介している事例を、これからSPEでシリーズで紹介する。次世代のスマートシティのあり方について考える参考になればと思う。
「歩く」を促す街づくり
単純なアイデアが街を大きく変えることもある。そのことを考えさせてくれるのがアメリカのWalk [Your City]である。
日本では街を歩くことは普通であるが、アメリカや新興国などでは車社会が中心で、歩くことは二次的とも言えるのが実情だ。道路の標識は、基本的に自動車を運転する人の為に設置されていることがほとんどである。速度制限や駐車禁止などもそうであるが、行き先を示す標識も「◯◯まで3Km」という示し方で、自動車での移動を前提にしている。歩行者への配慮はあまりない。
Walk [Your City]は、その状況を「◯◯まで徒歩5分」といった歩行者のための標識を電柱などに括り付けて、歩きやすい街づくりをしようとする実にシンプルなアイデアだ。標識には、QRコードがあり、スマホなどで自分の位置や近隣の情報も得られるようになっている。
アイデアそのものは、あるいは画期的ではないかもしれない。画期的なのは、これを市民の側で自発的に考えて実施されたもので、それが世界中に広がるムーブメントとして広がったことだ。
行政が歩行者のための標識を街に設置することはある。しかし、それを実現するためには多くの手続きと高いコストがかかるのが通常だ。Walk [Your City]は、ビラを貼るのと同じ感覚で歩行者のための標識づくりを一夜で、低コストで実現してみせた。そしてこれを世界に広めたのはSNSによるソーシャル・メディアである。Walk [Your City]は、個人の実験として始まったが、今は法人化し、オーダーメイドで標識をつくり、発送するビジネスに発展している。
ホームページには、さまざまな都市のケーススタディが掲載されているが、それぞれがクリエイティブな方法で「歩く」街づくりを行っていて、人々のわくわく感が伝わってくる。
Walk [Your City]ホームページはこちら。
「協調的な技術」を使う新しいスマートシティは、こうした一般の人々のわくわく感で築かれてくのだろう。目からウロコが落ちる思いである。

