【未来都市】ベルリンのスポンジ・シティ構想

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ベルリン市の屋上緑化:Deutsche Welleホームページより転載

ドイツでは今世紀に入ってから、熱波や洪水が頻発している。2003年にヨーロッパを襲った熱波は、ヨーロッパ全体で5万人を超える死者を出し、ドイツでも7000人の犠牲を出す大災害となった。また2016年5月には、数時間で数ヶ月分の雨量を記録し、津波のような洪水がドイツの街を襲った。人々に甚大な被害を与える熱波や洪水の増加は、地球温暖化による気候変動が影響していると見る向きが多い。

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2016年のドイツでの洪水の様子:Deautsche Welleホームページより転載

こうした状況を受け、ベルリン市は2007年からスポンジ・シティ構想を推進している。

スポンジ・シティとは、街全体で雨水を吸収する都市設計のコンセプトである。例えば、ビルの屋上緑化や貯水タンクの設置により、熱波到来時には水の蒸発で表面熱を奪って暑さを緩和し、大雨のときには雨水を吸収して下水や河川に排水が過度に集中することを防ぐ。

ベルリン市は2016年8月にスポンジ・シティ構想を具体化するレポートStEP Klima KONKRETを公表した。屋上緑化や熱反射する壁色の推奨、アスファルト以外の地表割合の増加など、専門家の意見を集めて、今後のまちづくりの方針を示した。ベルリン市は2007年から気候変動に伴う熱波や洪水対策を議論してきたが、いよいよそれを実現する段階に入ってきた。

名称未設定

StEP Klima KONKREのレポートより転載

スポンジ・シティのアイデアは、世界的には新しいものではない。日本でも、1981年、都会型洪水が多かった墨田区に新しい国技館を建設する際、洪水対策と雨水再利用のための巨大な貯水槽を国技館の地下につくった。洪水対策と雨水の再利用は「スポンジ・シティ」という言葉が生まれるずっと前から日本が取り組んできたコンセプトであるが、近年は関心が更に高まり、2014年に「 雨水の利用の推進に関する法律(平成26年法律第17号)」が制定され、2015年に「雨水の利用の推進に関する基本方針」が閣議決定されている

ベルリン市のこうした施策は、街の魅力づくりにも生かされる。街のスプロール現象(都心部から郊外へ無秩序、無計画に開発が拡散すること)を防止し、都市をより快適で生活しやすい場所にすることが目的だ。スポンジ・シティ作りは、今や次世代の都市に欠かせない要素となってきている。

Sponge City: Berlin plans for a hotter climate (Deutsche Welle: 7/22/2016)

 

【イノベーション】よいアイデアが普及することの難しさ:空中から二酸化炭素を回収

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良いアイデアと良いビジネスモデルの間にあるギャップ

素晴らしいアイデアは、世界中の研究者などから生まれている。新しい発電装置や蓄電池、生命科学を応用した新技術、ナノテクノロジーを応用した新素材など、分野も対象も多種多様である。しかし、こうした新しい技術なりアイデアが実際に世の中に普及し、使われるようになるには多くの難関を乗り越えていく必要がある。

アイデアが実証されるかどうかというテクノロジー・リスク、製品として成り立つかかどうかの製品化リスク、さらには商品として実際に売れるかどうかのマーケティングリスクなど、多くの山や谷が待ち構えているのである。基礎技術の場合、その実証に長い時間が必要だ。そのあとのプロセスも、人々の生活を変えるインパクトを持つ技術であればあるほど、その実現に長期間を要する可能性が高い。

欠かせないのは、そうしたプロセスに伴うコストを賄う資金であり、サステナブルな事業を築くためのビジネスモデルだ。カネの切れ目が、技術開発の切れ目となるケースがとても多い。特に短期間で成果を出すことが求められるビジネス社会においては、長期にわたる基礎技術の開発は非常に難しくなっている。

例えば、The Guardian紙で紹介している「空気中から二酸化炭素を直接回収する技術」がある。空気中から二酸化炭素を直接取り除くことで、温暖化対策に貢献するというアイデアである。大きなフィルターに空気を通し、溶解液などで二酸化炭素を抜き出して、抜き出した二酸化炭素を合成燃料などに使用するもの。工場のように一カ所で処理できない車や飛行機などが排出する二酸化炭素を空気中から直接取り出して分離しようとする技術である。

現在、これを研究開発し普及しようとするいくつかのベンチャー企業により各地でパイロット事業が行われている段階だ。カナダのカルガリーをベースにするCarbon Engineerはビル&メリンダ・ゲイツ財団からの支援を受けて事業化を進めており、スイスのClimeworksは自動車メーカーのアウディ(Audi)から資金を調達している。またニューヨークを拠点にするGlobal Thermostats社も米国のエネルギー関連企業からの資金調達を受ける見込みと言われている。

どの企業も直面しているのが、サステナブルなビジネスモデルの構築だ。この技術が温暖化対策の効果的な手段となるには、何千億円という投資が必要となり、そのコストを払おうという政府や国際機関は現れていない。回収した二酸化炭素を商業用に利用するとしても、まだ規模が小さすぎて事業を継続させるまでには至らない。長期的にビジネスの機会を伺うための、短期的な資金の調達がどの企業にとっても喫緊の課題だという。

日本でも、多種多様な基礎技術の開発に対して政府は後押しをしようとしており、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)やJST(科学技術振興機構)などを通じてバックアップのプログラムが展開されている。パイロットまで持っていくことは比較的やさしいが、ビジネスとして普及させる戦略構築の可否、それを行うことのできる人材の確保が今後の明暗を分けるであろう。

ご参考:Startups have figured our how to remove carbon from the air. Will anyone pay them to do it? / The Guardinan July 14, 2015