【イノベーション】アフリカで進む「次世代型」教育支援ビジネス

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Bridge International Academiesのホームページから転載

途上国の教育支援とデジタルの新しい融合

途上国における教育支援をITを使って支援する試みは、これまで無数にあったが、成功事例は非常に少なかった。例えば、MITのネグロポンテ教授が推進したOLPC(One Laptopp Per Child)の100ドルパソコンが有名である。2005年頃に始まったこのプロジェクトは、小さなパソコンをアフリカ中の学校に配り、子供達の教育を支援するもので、多くのドナーの支援を受けて一世を風靡した。しかし、筆者がルワンダの学校で実際に見てきたところでは、残念ながらそのほとんどが使われておらず、校長室にある金庫に大切に保管されているだけであった。OLPCの活動そのものも、今や聞かなくなっている。

また教室などでパソコンを使い、映像で教育支援を行う仕組みも多く試された。実にたくさんの教育用コンテンツが巨額な資金を使って制作されてきたが、その成果は十分に発揮されたとは言いがたい。

こうした失敗の原因は多々あるが、共通と思われるものをあげると以下の3点となるであろう。1点目は、資金の不足である。小さな規模のプロジェクトが無数に生まれたが、基本的にドナーからの資金に頼っており、プロジェクトが終了すると資金不足に陥り、事業は終了となる。2点目がメンテナンスの難しさである。パソコンやらプロジェクターが故障すると修理できない。そのまま埃をかぶって放置されてしまうのが大半だ。3点目が教師の問題である。いくら立派な機材やコンテンツを渡されても、その利用法について十分な指導やフォローがなければ継続は難しい。

ケニアで始まり、ウガンダにも広がりつつあるBridge International Academiesは、そんな死屍累々の教育支援プロジェクトの欠点を補い、「次世代型」教育支援ビジネスに成功している。すでに12万人の子供たちを教えており、スタッフの数も5000人を超えている。

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Bridge International のユニークな点は、有料でサービスを提供していることだ。もちろん貧困者でも払うことができる少額だが、無料にはしない。授業料を払ってでも受けさせたい授業をつくることで、持続的な運営を目指している。

またコスト削減にも斬新なアイデアを導入している。基本的に一人の担当者が学校を回すシステムで、教師の負担を軽減するため、ITを活用したバックオフィスが全面的にサポートする仕組みとなっている。授業料の計算や回収は、モバイルバンキングで行い、教師が直接現金計算や管理を行うことはない。

さらに教室で教師が教える方法については、手元のタブレットが指導してくれる。簡単な操作で、授業の教え方がわかり、教師が準備する負担を軽くし、標準的な授業がどこでも行えるようにしている。

Bridgeモデルが実現できた背景には、データ通信の普及と低価格化、タブレットのようなデバイスの普及、モバイルバンキングによる少額オンライン決済の仕組みができたことがある。「次世代」教育支援ビジネスは、時代の変化と技術の発展を上手にビジネスモデルに組み込んでいるのだ。

今後は、もっと教師を負担を軽減し、誰でも先生になれるようなシステムが広がるであろう。また子供達の学習を細かくフォローする仕組みによって、効果的な学習管理の研究が進むに違いない。翻って日本の学校や塾の様子を見ると、IT化が遅れており、教師の負担も過剰なままだ。こういうアフリカの技術とコンセプトこそ、リバースエンジニアリングが必要なように思うが、いかがであろうか。

ドイツにおけるインクルーシブ教育の意識調査

Deutsche Welieの記事より転載

Deutsche Welieの記事より転載

ドイツのBertelsmann Foundationが行ったインクルーシブ教育に関するドイツ国民の意識調査の結果が公開された。レポートはドイツ語で書かれているのだが、概略が英字紙に掲載されていたのでご紹介したい。

ドイツでは2009年に国連の「障害者の権利に関する条約」を批准し、インクルーシブ教育の普及を進めている。本調査は、批准後6年が経過する今、ドイツ国民の意識がどのようになっているかを4300名の親を対象にインタビュー調査を行ったものである。

調査によれば、回答した4300名の3分の1以上がインクルーシブ教育を行う学校に子供を通わせている。インクルーシブ教育を行う学校に対する親の評価は高く「子供を通わせている学校に満足しているか」という質問に対し「満足」と答えた親は68%にのぼり、インクルーシブ教育を導入していない学校に子供が通う親の58%を上回る。

先生に対する評価も高く「説明がきちんとできる」、「教えることへのコミットが高い」、「子供の長所を伸ばしている」といった項目で、インクルーシブ教育を行う学校の先生の評価は一般の教師より高くなっている。

調査結果にはインクルーシブ教育に関する親たちの複雑な思いも反映されている。調査対象の7割がインクルーシブ教育が社会に必要と回答する一方、障害者は特別学校で学んだ方が良いとする回答者は6割を超え、半数がインクルーシブ教育によって障害を持たない子供たちの学習が遅れると考えている。

日本でも2014年1月に「障害者の権利に関する条約」を批准、関連法が施行となっている。現場レベルも含めてどのような教育システムを構築していくのか、具体的な議論はこれからだ。インクルーシブな教育とは何か、そもそも教育とは何かの根本的な議論がなされ、全ての子供たちがそれぞれの個性やニーズに応じて成長できる社会に(時間をかけながら)変化していくことを期待したい。

条約批准後のドイツでも、地方公共団体レベルでの対応はまちまちで、すこしずつ理解が広まっている様子だ。これから始まる日本においても長い時間と多くの議論が必要となるに違いない。次世代の社会を生きる子供たちのために、わたくしたち一人一人ができることは、まずは知ることだろう。

記事: Educational Inclusion Slowly On The Rise In Germany, Study Shows/Deutche Welie/ 2015.7.1

調査レポートはこちら(ドイツ語)