【エネルギー】グリーン経済へ向けて:世界の投資動向

imagebase5_69

クリーンエネルギーや省エネ、環境に優しいインフラ施設など、サステナブルな社会と地球環境を目指すグリーン経済への投資が世界的に増えてきている。対象が異なる2つのソースから世界の動向を見ていきたい。

グリーン経済への民間投資は年間110兆円

Strategic Sustainable InvestmentのTimothy Nash氏によれば、グリーン経済への民間投資は2007年以来の累計で770兆円を超えているという。これは再生可能エネルギー、グリーン・ビルディング、スマート・グリッド、エネルギー効率が高い上下水施設、あらゆる種類のクリーン・テクノロジーズへの投資の累計で、クリーン石炭など「つけ刃」的な技術への投資は除いている。

本件記事はこちら:Does $6.2 trillion in green investment matters to global economy? 

年間ベースで見ると2008年のリーマンショック時に大きく減ったあとは、徐々に投資額が増加している。2014年の実績では8,790億ドル(約110兆円)と2008年時の倍の額に迫ろうとしている。

SocialFinance.caから転載

SocialFinance.caから転載

この規模感だが、世界の2014年における年間の民間投資額総計が16兆ドル(約2095兆円)に対しては5.2%、石油・石炭関係への民間投資額(2013年)が約1兆ドル(約124兆円)なので、今や石油・石炭関連を追い抜く勢いだ。

急速に増加するクリーンエネルギー市場:中国が牽引

また、クリーンエネルギーに対象を絞ったBloomberg New Energy Financeによれば、公共・民間の両方を合わせた世界のクリーンエネルギーに対する投資額は3100億ドル(約38兆円)となっている。2011年のピーク時よりは低い水準ながら、2013年対比16%の伸びであり、過去10年間で5倍の額に増加しているという。

世界で最もクリーンエネルギーへの投資額が大きいのが中国で895億ドル(約11兆円)。次いで米国が518億ドル(約6.4兆円)、日本は413億ドル(約5.1兆円)となっており、ブラジル、インド、南アフリカなどの伸び率も高い。欧州全体では660億ドル(約8.2兆円)である。こうした投資額の半分が太陽光発電関連であり、次が風力発電となっている。

最新のデータはこちらを参照:Global Trend in Clean Energy Investment 2015Q1

環境汚染で悪名の高い中国が、世界で突出してクリーンエネルギーへの投資額が大きいのは意外に思われるかもしれないが、近い将来、グリーン経済の分野でもリーダー的な存在に変わる可能性もある。

また太陽光発電の伸びは、途上国において大きく、大きなインフラ投資もあるが、家庭用の太陽光発電装置が急増している。こうした家庭用のソーラー発電装置の急速な普及は、無電化地域の削減に大きく寄与しており、世界の様子を激変させている。

こうした大型の投資の多くがアセットファイアンス(Asset Finance)で行われている。こうしたファイナンスの手法の確立も、投資急増に一役を買っていると思われる。これについては、別途、お伝えしたい。

【ソーシャル】オーストラリアのカフェ系ソーシャル・エンタープライズ

メルボルンのソーシャル・エンタープライズのひとつCharcol Laneから転載

メルボルンのソーシャル・エンタープライズのひとつCharcol Laneのホームページから転載。アボリジニの自立支援をレストランを通じて行っている。

オーストラリアのメルボルンでは、カフェやレストラン形態のソーシャル・エンタープライズがちょっとしたミニブームとのこと(Refugees welcome: inside Melbourne’s social enterprise cafe/ The Guardian July 15, 2015)。少なくとも13社が既に稼働していて、今後も増えていく見込みだという。内容を見てみると利益を発展途上国に100%還元するというところもあれば、人材育成を目的にするところもある。

中でも興味深いと感じたのは、社会的弱者を対象に人材教育に力を入れているところである。オーストラリアは移民を多く受け入れる国であり、アフリカやアジアなどからの移民や避難民が多いが、避難してきた途上国の若者が職を得ることは難しい。人種差別も残っている。先住民のアボリジニの人々も職を得るのは難しいという。その状況を改善するために、カフェやレストランで短期間雇用し、飲食業で働くための基本的なスキルを身につけさせ、社会で自立できるようにしているのがソーシャル・エンタープライズが増えてきているのだ。

Charcoal Laneは、地元の食材を生かした料理でを出す地元のレストランであるが、アボリジニの若者への支援と飲食業で仕事するためのスキルとトレーニングの機会を提供している。ホームページの写真を見る限り、とても上品でありながらアットホームな感じのする店内で、こうしたところで訓練を受けたということであれば、次の職探しにもプラスとなるであろう。

Long Street Coffeeは、2015年6月にオープンしたばかりだが注目を集めている。ここでは、アフリカなどの途上国からの移民や避難民を対象にカフェでのオンザジョブ(On the Job)トレーニングを目的にカフェを開いた。創業者のFrancois and Jane Marx夫妻は、2014年に2名の若い避難民を雇って、アートフェスティバルに出店を出すことからスタートした。その後、クラウドファンディングで集めた資金と自分たちの貯金を元手に、ガレージを改装してカフェをオープンした。現在、ガンビア、イラン、マレーシアからの移民3名を6ヶ月間雇用して、訓練を行っている。いずれもオーストラリアに来て、初めての職だ。

It’s one thing to accept that asylum seekers come here, and accept that they are refugees, but it’s a whole other thing to expect them to somehow create a life for themselves when they can’t find employment despite all their best efforts,” Jane says. “We want to uphold the Australian value of a fair go.

「亡命希望者にオーストラリアに来ることを認めて避難民として受け入れることと、彼らがここで職を見つけて生活を築けるかどうかは全く別の話だ。実際、どんなに努力しても職が見つからない。私たちはオーストラリアのfair go(公平にチャンスを与えること)の価値を守りたい」とJaneさんは語る。

Broadsheet.comの記事より/ Long Street Coffee Opens in Richmond

メルボルンへ立ち寄ることがあれば、是非、こうしたレストランやカフェを訪ねてみて頂きたい。

【イノベーション】よいアイデアが普及することの難しさ:空中から二酸化炭素を回収

Retreat, 5K 014 copy

良いアイデアと良いビジネスモデルの間にあるギャップ

素晴らしいアイデアは、世界中の研究者などから生まれている。新しい発電装置や蓄電池、生命科学を応用した新技術、ナノテクノロジーを応用した新素材など、分野も対象も多種多様である。しかし、こうした新しい技術なりアイデアが実際に世の中に普及し、使われるようになるには多くの難関を乗り越えていく必要がある。

アイデアが実証されるかどうかというテクノロジー・リスク、製品として成り立つかかどうかの製品化リスク、さらには商品として実際に売れるかどうかのマーケティングリスクなど、多くの山や谷が待ち構えているのである。基礎技術の場合、その実証に長い時間が必要だ。そのあとのプロセスも、人々の生活を変えるインパクトを持つ技術であればあるほど、その実現に長期間を要する可能性が高い。

欠かせないのは、そうしたプロセスに伴うコストを賄う資金であり、サステナブルな事業を築くためのビジネスモデルだ。カネの切れ目が、技術開発の切れ目となるケースがとても多い。特に短期間で成果を出すことが求められるビジネス社会においては、長期にわたる基礎技術の開発は非常に難しくなっている。

例えば、The Guardian紙で紹介している「空気中から二酸化炭素を直接回収する技術」がある。空気中から二酸化炭素を直接取り除くことで、温暖化対策に貢献するというアイデアである。大きなフィルターに空気を通し、溶解液などで二酸化炭素を抜き出して、抜き出した二酸化炭素を合成燃料などに使用するもの。工場のように一カ所で処理できない車や飛行機などが排出する二酸化炭素を空気中から直接取り出して分離しようとする技術である。

現在、これを研究開発し普及しようとするいくつかのベンチャー企業により各地でパイロット事業が行われている段階だ。カナダのカルガリーをベースにするCarbon Engineerはビル&メリンダ・ゲイツ財団からの支援を受けて事業化を進めており、スイスのClimeworksは自動車メーカーのアウディ(Audi)から資金を調達している。またニューヨークを拠点にするGlobal Thermostats社も米国のエネルギー関連企業からの資金調達を受ける見込みと言われている。

どの企業も直面しているのが、サステナブルなビジネスモデルの構築だ。この技術が温暖化対策の効果的な手段となるには、何千億円という投資が必要となり、そのコストを払おうという政府や国際機関は現れていない。回収した二酸化炭素を商業用に利用するとしても、まだ規模が小さすぎて事業を継続させるまでには至らない。長期的にビジネスの機会を伺うための、短期的な資金の調達がどの企業にとっても喫緊の課題だという。

日本でも、多種多様な基礎技術の開発に対して政府は後押しをしようとしており、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)やJST(科学技術振興機構)などを通じてバックアップのプログラムが展開されている。パイロットまで持っていくことは比較的やさしいが、ビジネスとして普及させる戦略構築の可否、それを行うことのできる人材の確保が今後の明暗を分けるであろう。

ご参考:Startups have figured our how to remove carbon from the air. Will anyone pay them to do it? / The Guardinan July 14, 2015

【エネルギー】ドイツの脱原発、脱火力発電の現状

Deutsche Welle (DW)のホームページより転載

Deutsche Welle (DW)のホームページより転載

進む代替エネルギーの活用/進まない脱火力発電

ドイツ政府は、4年前の2011年6月30日、東日本大震災を受けて、稼働している17の原発を2022年までに全て停止とすることを決定した。直ちに8基の原発が稼働停止となり、先月9基目の原発が停止となっている。

ドイツの長期目標として、2050年までに再生可能エネルギーが発電量に占める割合を80%まで引き上げることを目指しており、ガスや石炭による発電も割合を落としていく方針だ。ドイツにおける気候変動に関する関心の高さと議論は、日本では想像がつかないほど真剣で、促進派も反対派も、政策における優先度は高い。

脱原発宣言をしてから4年が経過した現状をDWが記事にしているのでご紹介致したい。

Deutsche Welle (DW)のホームページより転載

Deutsche Welle (DW)のホームページより転載

上記のグラフのとおり、再生可能エネルギーの占める割合が大きく増加した。4年前から11%増の28%となっており、原発とガスによる火力発電を置き換えている様子がわかる。ちなみに日本は5%程度である。一方、石炭による火力発電の割合は43%で変化なしとなっている。

ドイツは2020年までに1990年対比40%の二酸化炭素輩出量を削減する必要があり、火力発電の削減は喫緊の課題となっている。この対策として、ドイツ政府は二酸化炭素排出量の大きい非効率な火力発電所に対して、気候税(Climate Levy)の導入を現在検討している。

利害の激しい対立

このような政策は、当然のことながら激しい対立を生み出している。原発や火力発電を運営していた電力会社はエネルギー政策によるビジネスの損失を国に負担させるべく動いており、気候税については、火力発電所の従業員組合や石炭の坑夫組合の猛烈な反対がある。一方、これに対抗してグリーンピースのような環境保護団体が、大きなデモを展開するといった具合だ。

脱原発の問題は、発電所を廃炉にするということだけでは済まない。核廃棄物の安全な処理という大きな課題が残る。核廃棄物を数百万年にわたって格納する場所と方法を見いだして処理を完成するには30年〜80年を要すると言われている。電力会社は360億ユーロ(約4兆9千億円)を原発の廃炉と核廃棄物の処理費用として積み立てているが、実際の費用は500億〜700億ユーロになる可能性を指摘する論者もいる。その場合、国家と国民への負担は非常に大きいものとなる。

ドイツの無謀にも見える挑戦が、どのように推移するのか。世界は固唾をのんで注目している。

How far along is Germany’s nuclear phase out? / Deutsche Welle June 29, 2015

【ソーシャル】カメルーンのソーラー発電による給水システムの意外な成果

A pioneering solar-powered water project has allowed villagers in Cameroon’s arid north to start small businesses. Photograph: imageBROKER/Alamy

A pioneering solar-powered water project has allowed villagers in Cameroon’s arid north to start small businesses. Photograph: imageBROKER/Alamy

飲み水の安定的な供給が生み出す好循環

カメルーンの北部地域の深刻な水不足を補うために設置されたソーラー発電による地下水の給水システムが思わぬ成果を出して注目されている。The Guardianの記事を紹介する。

この地域は降水が不安定なため、慢性的な水不足に陥っており、汚水を飲み水にするための病気が蔓延している。加えて、ボコハラムによる避難民の流入も増えて、事態は非常に悪化していた。カメルーンのNGOであるThe Center for Environment and Rural Transformation (Cerut)は、ソーラー発電で地下水を汲み上げるシステムを作り、パイプを通じて近隣の村々に飲み水を供給する仕組みをつくった。太陽光が強いこの地域では、一日に4万リットルの水を汲み上げることができるという。村民の水不足は解消し、病気で苦しむこともなくなった。

このシステムのユニークなところは、地下水を汲み上げるポイントをひとつにしてメンテナンスのコストを下げていることだ。そこから40カ所ある給水ポイントへ水を流し、各給水ポイントで水を貯める。各家庭は、この給水ポイントから手動で動く簡単なポンプを使って水を家庭用の容器にいれて持ち帰る。維持費用や設置のコストを人々のキャパシティに対応してバランスを取った仕組みになっている。

興味深いのは、水を得た農民たちの利用法だ。Cerutは政府の協力も得て、200名の女性に助成金を支給し、自営のビジネスを始めることを奨励した。水を汲むための長い時間の拘束から解放され、自由な時間を得たことで、現金収入を得るための新しい仕事ができるようになった。

中でも地ビールの生産が伸びているという。この地域ではビールづくりに必要なミレットの収穫が水の安定的な供給により4倍に増えたことに加え、原料となる水の安全性が確保でき、需要が大きく高まっているのだ。連鎖的な悪循環を断ち切り、好循環に変えていくシナリオが見えてきた。

ソーラー発電システムの単価が劇的に低くなってきていることから、こうしたソリューションは今後も増えてくだろう。バングラデシュでも、ソーラー発電を利用した灌漑システムを政府が後押しして広がっている。

Beer and Business: the unexpected benefits of water access in Cameroon/ The Guardian July 7, 2015

【ビジネスモデル】リバース・イノベーションを成功させる5原則

リバース・イノベーションで失敗しないための5原則

リバース・イノベーションとは、新興国のためにデザインした製品やサービスに改良を加え、先進国の市場で販売するコンセプトである。

2015年7月号のHarvard Business Reviewにリバース・イノベーションを最初に提唱したVijay GovindarajanとAmos Winterが、これまでのさまざまな企業の実績を踏まえ、リバース・イノベーションで陥りがちな5つの罠と成功させるための5つの原則を論じている。少し長くなるが紹介したい。

陥りがちな罠1:(先進国向けの)既存の製品をそのまま新興国に売ろうとすること

既存の製品やサービスをベースに改良を加えて新興国の市場に売り出すことが一番簡単でリスクが少ないように思われるが、実はこの方法では買い手はつかない。実際のニーズと合わないことが多いのだ。

デザイン原則1:まず問題の本質を理解せよ

既存の商品をどう売るかではなく、途上国のユーザが直面している課題の本質を理解し、具体的なニーズを把握することが先決。新興国の固有の問題やニーズに焦点を充てて研究すべきである。

陥りがちな罠2:機能を落として価格を低くすること

既存製品やサービスの機能を落として価格を低くすることこそ新興国へ進出する方法だと勘違いする企業が多いが、これは間違いである。新興国のユーザも高い機能を求めている。

デザイン原則2:新興国に固有の設計自由度を生かして最適な設計を目指す

機能を落とすという発想ではなく、新興国に固有の設計自由度を生かして最適なデザインを目指すべきである。先進国では見当たらないものや使うことのない技術でも、新興国では最適に機能することもある。新興国の固有の環境の中で、いかに最適な方法を見いだすかが大切。

Embed from Getty Images

陥りがちな罠3:技術的な要件を徹底的に検討することなく設計すること

導入しようとする製品やアイデアが現実的に機能するかどうかの技術的な検討が不徹底で、重要な点が見過ごされたことで失敗に終わるケースが多い。

デザイン原則3:消費者の課題の背景にある技術的な要件を全て分析すること

先進国の常識で状況を判断するのではなく、新興国に固有の状況を徹底的に分析することが大切。例えばトラクターを導入する際には、新興国の状況に合わせて軽量にする必要があるが、農作業での状況を分析するだけではなく、人の運搬にも使うというような当地の使い方にも目を配るべき。

陥りがちな罠4:ステークホルダーに無関心

企業によっては、新興国に数日間滞在し、それで全てが分かったように思うところがあるが、それは間違いである。

デザイン原則4:できるだけ多くのステークホルダーとテストすること

ユーザだけではなく、つくる人、売る人、買う人、修理する人、廃棄する人のように、できるだけ多くのステークホルダーを巻き込んでテストを行うべき。また、設計する時には「ユーザのため」というより「ユーザと共に」という態度で協働する姿勢で臨んだ方が良い。

陥りがちな罠5:新興国向けのデザインが先進国で受け入れられるとは信じないこと

先進国の消費者はブランド志向が強く、途上国から製品には関心がないと考える。あるいは逆に既存製品の強剛になると恐れることは間違いである。

デザイン原則5:新興国で直面する制約をバネに世界に通じる製品をつくる

途上国のさまざまな制約は、それを乗り越えるために技術のブレークスルーが生まれる可能性がある。制約のある環境でデザインした製品をベースに、先進国の仕様や嗜好に合わせて改良することで、高性能で低価格の商品を先進国で販売することができる。

リバース・イノベーションの事例は、まだ多いとは言えないが、新興国の発展が勢いをつけていくなかで、大企業にとっても無視できない戦略となるであろう。記事では、多くの事例を挙げて上記の5つの原則を開設している。途上国の社会課題を解決する多くのイノベーションが生まれてくることを期待したい。

“Engineering Reverse Innovations” by Vijay Govindarajan &Amos Winter/ Harvard Business Review July-August 2015

【ソーシャル】データ・フィランソロピィで社会に貢献!

imagebase23_26

ロイヤルティ・プログラム(優良顧客に対して特典を提供するプログラム)の世界的リーダーであるAimia社は、保有している顧客のロイヤルティに関する専門知識と世界中の人材や経験を生かして、非営利団体の経営改善に役立つ社会貢献を行っている。

非営利団体の持つデータを解析し、より良い事業活動の提案を行うことで、社会課題の解決に貢献することが目的だ。これを「データ・フィランソロピィ」と呼んでいる。この活動は、今年のThe Guardian Sustainable Business Award の社会インパクト部門で大賞を受賞し、The Guardian紙に関連記事が掲載されているのでご紹介したい。

始まったのはイギリスからだ。Aimia社の傘下にあるNectar社(イギリスのロイヤリティ・プログラムのトップ企業)が取り組んでいる。同社のデータ分析の専門家達がプロボノで働き、過去2年間でのべ15,000時間を費やし、50以上のチャリティ団体を支援。また活動資金として250万ポンド(約5億円弱)の調達にも成功しているとのこと。

例えば、若いホームレスを支援する非営利団体に対しては、12ヶ月のプロジェクトに40人の専門家が参加し、ホームレスの若者に関するデータを解析。ホームレスを支援するプログラムの有効性について分析・評価し、より効果的な介入(intervention)を提案している。

若者のスポーツ振興を行う非営利団体では、コーチの働く仕事の30%が情報整理のためのデスクワークであることが判明。タブレットなどを活用した効率的な情報収集のシステムづくりに取り組み、コーチがもっと多くの時間を子供たちに充てられるように改善した。

本活動の対象となるのは、データ分析に必要な情報量を保有している比較的大きな非営利団体に限られるが、せっかく蓄積した大量のデータを十分に生かせない団体においては、組織の効率化や有効なプログラムの企画・評価という点で、大きな成果を生み出す可能性がある。

またこれは一方的な慈善活動ではなく、Aimia社にとっても、会社の信用を高め、従業員の経験と訓練の機会ともなり、企業としてのメリットも大きいという。

現在、イギリス以外にもアメリカ、オーストラリア、カナダと活動を広げており、今後は更に拡大する方針とのこと。「データ・フィランソロピィ」というビジネスと社会貢献のベクトルが一致するこのモデルには、サステナブルな社会を構築するための大切なヒントが含まれているように思われる。

Aimia Harnesses the Power of Data Insight for Social Good/The Guardian

【ソーシャル】アメリカで注目!コミュニティでつくる健康という考え方

imagebase28_64

Well Beingを作り出す人とコミュニティのあり方

人が健康であるとはどういうことであろうか。ランニングをして体を鍛えることなのか。新しい医術や薬の発明であろうか。今、アメリカで健康に生きることの意味を問い直し、人とコミュニティの新しいあり方を議論する動きが進んでおり、スタンフォード・ソーシャル・イノベーション・レビューのCommunities Creating Healthと題するブログ・シリーズのなかで、さまざまな研究者や実践者の意見が投稿されているので紹介致したい。

それぞれのコメントのテーマや背景は異なるが、底辺に流れる問題意識や主張は共通しているー今の医療制度は、「病の治療」や「肉体的な健康の促進」というような狭い範囲でしか健康を考えない傾向が強いが、もっと広い意味での「well being(人間的に豊かな生活)」を実現するための方法を考えるべきであり、その鍵となる「コミュニティ」の役割を重視すべきだという主張だ。

全部で19の投稿が掲載されているが、個人の本当の幸せとは何かという観点から議論する人もいれば、現状の医療費用の高騰や国家財政の観点から意見を述べる人もいる。また、そもそもコミュニティの地域や構成員の多様性からコミュニティの定義について論じる研究者もいる。

Communities Creating Health: An Introduction(コミュニティのつくる健康:序論)

What is Community Anyway?(コミュニティって何だろう?)

Investing in Community-led Health(コミュニティがつくる健康づくりに投資しよう)

全体として論理的にあいまいで具体性に欠ける印象も受けるが、社会の構造が大きく変化し、人と人との結びつきが希薄化するなかで、高齢化する社会をサステナブルなものにしていくための課題を提起し、コミュニティの果たしうる役割を見直そうとする意見は傾聴に値する。

「コミュニティ」といっても、もはや私たちは「古き良き時代」に戻ることはできない。かといって、今の社会や人々の生活のあり方をそのまま続けることもできない。新しい価値観と人口構造、ますます多様化する人と人とのつながり方を踏まえ、21世紀の「Well Being」を模索することが求められている。

イギリスの認知症フレンドリーなビジネス環境づくり

Embed from Getty Images

認知症にやさしいビジネス環境づくり

高齢化社会を迎えようとしているイギリスでは、ビジネスシーンにおいても認知症とその介護に関わる家族にやさしい環境づくりに取り組むところが出てきている。

アルツハイマーズ・ソサエティ(Alzheimer’s Society)が主催する認知症アクション・アライアンス(Dementia Action Alliance)では、2015年5月にリバプールで全国初めての「認知症にやさしいビジネス(Dementia Friendly Businesses Event)」を開催している。これはリバプール市の経営者を対象に、認知症の方々にやさしい環境がいかにビジネスの発展に役立つかというテーマで講演やワークショップが行われたものだ。

認知症を理解することで、より良い顧客サービスが可能になるとワークショップでは訴える。店頭でどう認知症の顧客に対するかというサービス事業者の役に立つだけではなく、例えば不動産開発事業者が、いかに認知症の家族を持つ家庭が生活しやすい街や建物をつくっていけるか、考えるきっかけにもなるという。

認知症という個人や家族の課題を、どう社会が受けて止めて「自然」な環境づくりをしていくか。福祉やボランティアという観点だけではなく、ビジネスの視点からも環境づくりに取り組むアプローチは合理的であり、必要だと感じる。

The Guardian紙の記事はこちら(Businesses Ignore the Dementia Time-bomb at Their Peril)。記事の題名の意訳は「経営者よ、認知症を無視するのは致命的なリスクです!」。

パラダイムチェンジを迎える途上国の水支援

社会起業家への熱い期待

WHOとUNICEFが先頃公表したレポートによれば、現在、世界の91%の人々に安全な飲み水が供給されているという。1990年時点では世界人口のわずか76%にすぎず、この25年間で大きく改善した。安全な飲み水にアクセスできない国民が50%を超える国は1990年には23カ国あったが、現在では3カ国に減少している。

Progress on Sanitation and Drinking Water-2015 Update and MDG Assessment

しかし、今でも6億6千万人の人々がいまだに安全な飲み水にアクセスがないという。これはアフリカのサブサハラと南アジア地域の国々に集中していて状況はなかなか改善しない。

水道設備などの大型インフラが整っていないところでは、従来、井戸の掘ることが奨励されたが、一旦掘られた井戸はメンテナンスが行き届かず、数年して使えなくなるケースが多い。井戸を管理し長く使えるようにするには、管理する技術とモチベーションを持つ人が必要だが、日々の運営を国際機関やNGOが継続的に行うのは難しい。現地の人々も「援助慣れ」してしまい、自力で管理しようとするモチベーションも低い。

そこで今注目されているのが社会起業家だ。世界でユニークな取り組みが試みられている。

例えばインドのNextDropは水道局による水の配給時間を携帯電話のSMSで近隣に伝えるというサービスを行っている。インドの都市では水道局による水の配給の時間と量が不安定だ。日によって配給の時間が変わり、多くの人々(特に女性)が時間を無駄にしている(タイミングを間違えると水を受け取れない)。一定の手数料で配給情報を送るサービスは好評で、ユーザが増えているという。狙いはこうして集めた人々のデータだが、面白い試みだ。

NetDrop Uses Big Data, Texting to Improve Water Distribution

国際的なNGOであるWaterAidはWater Kiosk(水キオスク)なるモデルを試している。地元の社会起業家と組み、プリペイドサービスで水の供給が受けられるシステムだ。マラウイ、ウガンダ、ケニア、カンボジアなどで試験的にスタートしている。携帯電話のプリペイドのチケットを買うように、水のチケットを買う仕組みである。

WaterAidのWater Kioskの模様(Youtube)

まだ動きとしては小さいが、ユニリーバもOxfamと共同で、2014年12月にナイジェリアの都市内に2つの水供給センターを設け、地元の起業家に運営を任せている。NGOであるOxfamも、従来の援助に偏った支援の方法を、今後は市場への投資(Cash in Market)という方法へ重点を置いていくことを考えているという。

変化の意味するところ

こうした世界の動きから何が見えるだろう。ひとつには安全な飲み水のような社会課題へのアプローチが、画期的な道具や製品の創出という次元から、「オペレーションのイノベーション」に重点がシフトしてきていることだ。

それは部品としてのソリューションではなく、広い意味でのシステムとしてのソリューションに移行してきている兆候が見える。そこから生まれる付加価値を持続可能なエンジンに仕立てる戦略である。NextDropが水配給の情報を伝えるという単純なサービスから、じつはユーザの基本的な生活にかかわる情報を集め、より大きな付加価値のあるソリューションを提供しようとしているのはその典型だ。

また、援助機関のハンズオンに関する認識が変わってきてようにも思える。従来のハンズオンは「できるものができないもののためにやってあげている」という図式があり、そこに無理もあって持続しないケースが多かった。今は援助側も、できないことはできないと明確に割り切り、できないところをどのように地元のNGOや社会起業家と役割分担するかというところに、重点を置き換えているように見える。NGOや外部パートナーとのコラボレーションは今に始まったことではないが、持続的な運営の責任とリターンに対する厳密な議論が必要になってきているようだ。

このパラダイムの変化は、今後5年〜10年の間に大きく加速することが予想される。これからのBOPビジネスを考えていく上で無視できない兆候だ。