
コミュニティ冷蔵庫の様子(The GuardiansのHPより転載、写真Amy Hall)
国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界の食糧生産の三分の一は、人の口に入らずに廃棄されているという。先進国では、売れ残りや食べ残しなど、流通や消費段階で廃棄される割合が多い。いわゆる「食品ロス」と呼ばれる食糧の無駄づかいをなくすため、今、世界中のさまざまな組織や団体が取り組んでいる。
例えば、フードバンクの活動がある。規格外であったり、販売期限を過ぎたりして、通常では販売できない食品を集めて、福祉施設等へ無償提供する活動である。食べることは可能であっても無駄に廃棄される食品を、弱者支援に有効活用することが目的だ。米国ではフードバンクの活動によって、毎年200万トンの食品が有効活用されているという。日本でもセカンドハーベスト・ジャパンをはじめ、全国の11団体がネットワークをつくって活動している。
最近、市民の「分かち合う気持ち」をコミュニティで活かし、食品ロスの課題解決を貧困者支援と結びつける活動が世界で注目されている。イギリスでは、サモーセット市が「コミュニティ冷蔵庫」のプロジェクトを開始した。公共の空きスペースに設置された冷蔵庫に、街のスーパーやレストランが売れ残った食品を入れると、だれでもそこから無料で食品を取り出せる仕組みだ。
冷蔵庫を置く場所代や電気代は市が助成するが、運営は町のボランティアが行う。食品を提供する側に守るべき一定のルールがあるが、安全性については食べる側の自己責任である。市民の分かち合う思いと貧困者の支援を求める願いが、相互の信頼関係の上で結びついている。
冷蔵庫を介して食糧を分かち合うプロジェクトはスペインで始まり、いまや先進国だけでなく、インドやアラブ首長国連邦にも広がっている。ボランティアの活動内容は、食糧提供に限らない。清掃会社が冷蔵庫をきれいにするようなサービス提供のケースもあるという。
「シェア(分かち合う)する」という発想は、独占するという発想と対極にある。こうした私たちのささやかな思いこそが、格差社会に抵抗する最後の拠り所となるにちがいない。



