【イノベーション】1ドル眼鏡から見える光景

Onedollarglassesのホームページページから転載

Onedollarglassesのホームページページから転載

シンプルさを追求したモデル

ドイツのOneDollarsGlasses Association(1ドル眼鏡協会)は、2012年に設立され、途上国の1億5千万人と言われる視力障害の人々に安価で質のいい眼鏡を提供することを目的に、世界9カ国で活動を展開している。スチールでできた眼鏡のフレームを現地で簡単に加工できるキットを提供し、度数に応じたレンズをはめ込むことで、原価を1ドルにおさえた眼鏡を生産できるモデルを考案した。

できるかぎり部品数を減らし、なおかつスタイリッシュなデザインを維持するため、創業者のMartin Aufmuth氏は2年近くの研究開発を自力で行い、ウガンダでのテストプロジェクトを皮切りに、事業を拡大してきた。今、活動地域はアフリカ各地、ラテンアメリカ、南アジアにも広がり、シーメンスの財団から”Empowering People Award”を受賞するなど、世界で注目を集めている。

協会の主な活動は、対象国の現地の人々に、1ドル眼鏡を生産するためのトレーニングを施すことと、販売網を開拓するための活動が中心である。また現地の販売員にとって、サステナブルな事業にするため、効率的な生産とバリューチェーン上におけるコストの削減方法についても、研究と開発を進める。

マーケティングについてはシンプル化と効率が重視され、検眼と眼鏡のカスタマイズを一度の訪問で完了できるシステムを考案した。通常であれば販売員は、検眼とカスタマイズされた眼鏡の納品のためにそれぞれ1回、合計2回の訪問が必要であるが、販売員が検眼後に、その場で眼鏡を組み立て、カスタマイズすることで1回の訪問で完了する仕組みになっている。

このモデルの核となっているのは、Bending Machineと呼ばれる眼鏡のフレームの成型器だ。電気も不要で、メンテナンスがほとんど必要なく、簡単な手作業でフレームが成形できる。あとは大量生産されたポリカーボネート製のレンズをはめ込み、顔の形に合わせてカスタマイズするだけである。ドイツ人らしいクラフトマンシップと合理的精神を追求したモデルといえよう。

Onedollarglassesのホームページページから転載

Onedollarglassesのホームページページから転載

事業としての持続性がこれからの挑戦

OneDollarGlassesは、2014年度のアニュアル・レポートを発行している。各国での活動の内容が記されており、興味深い。また活動の収支報告書も掲載されており、収入と支出の内訳もディスクローズされている。

収入の大半は寄付金で、総収入70万ユーロ(約1億円)の93%に上る。その他も賞金などが収入源となっており、事業からの収入は非常にわずかだ。一方、支出は人件費、旅費、キャンペーンなどの広告宣伝費が約4分の3を占めている。収支を見る限り、寄付金頼みのNGOと似ているようだ。

こうした事業が、本当の意味でサステナブルといえるようになるためには、おそらく多くのイノベーションを必要とするだろう。「ソーシャル」や「サステナビリティ」という言葉が喧伝され、「ビジネス」や「インベストメント」というコンセプトが加わって新しい道筋が模索されているが、道のりはまだ険しいように感じる。

OneDollarGlassesのような団体にブレークスルーを期待したい。

【イノベーション】進化するアフリカのソーラー・システム

Deutsche Welleの記事より転載

Deutsche Welleの記事より転載

資金回収の課題を乗り越えて進む自家用ソーラーシステム

無電化の地域に自家用のソーラー・システムを入れる動きは、バングラデシュなどで広く普及している。バングラデシュでは政府の推進もあり、現在、実に100万世帯がソーラー・ホーム・システムで電化されてる。

このような爆発的な普及が実現した理由は、ソーラー・パネルの値段が劇的に低くなったことや、LED電球のような省エネ家電が普及し小さな発電量でも使い道が画期的に広がったことなどが挙げられるが、最も大きな推進力はファイナンスであろう。低所得者でも手が届くように、分割払いの方法を取り入れ、購入者の初期投資にかかる資金負担を軽減した。毎月の少額返済を1年〜2年続けて完済するとシステムは100%購入者のものになる。こうした仕組みのバックファイナンスを世銀などの国際機関などが政府を通じて支援している。

分割払いの方法は、バングラデシュではマイクロファイナンスの仕組みとネットワークがお膳立てした。現在、バングラデシュで最も販売量多いソーラー・ホーム・システムの会社がグラミンバンクのグループ企業やBRACのグループであることは偶然ではない。

しかし、バングラデシュで成功したこのモデルを、アフリカにそのまま持ち込むことはできない。一番のネックは資金の回収だ。南アジアのような人口密度の高いところでは、資金の回収は人手を使ってきめ細かく行うことができる。1㎢あたり1000人もいれば、1日で多くの顧客を回ることができる。しかし、アフリカではそうはいかない。家と家の間が数キロ離れていることもざらだ。こういうところでは、資金回収にかかるコストが高すぎて採算が合わないのだ。

この課題を解決する糸口を与えたのはモバイルのネットワークとM-Pesaのようなモバイル・ファイナンスの普及だ。アフリカでも、いまやモバイル・ネットワークは広く普及し、どこへ行っても携帯電話は通じるようになっている。また、モバイル・ファイナンスでは、銀行口座を持たなくても携帯電話で資金決済(送金・入金)や貯蓄ができるようになった。こうした新しいインフラが、アフリカの自家用ソーラー・システム(現地ではpico-solar systemと呼ぶ)の普及に新しい推進力をもたらすことになった。

Deutsche Welleの記事より転載

Deutsche Welleの記事より転載

例えば、ケニアをベースにしているM-KOPAやドイツのベンチャーであるMobisolなどである。今、アフリカの東部地域を中心に大きく成長している注目の自家用ソーラー・システムのベンチャー企業である。どちらのモデルも、資金の回収をモバイル・ファイナンスで行っており、顧客との現金のやりとりはなく、資金回収のための人件費が必要ない。これにより大幅なコストダウンを実現し、また資金管理を効率化した。

では未払いとなる顧客への対応はどうするのか。ファイナンスでは、かならず滞納する人々が存在し、その対応に相当の手間とコストが必要となる。両社は販売するシステムのそれぞれにSIMを挿入し、ワイヤレスで1件1件のシステムをセンターで管理できる仕組みを開発し、この最大の問題を解決している。支払いが滞った顧客のシステムは、遠隔から自動的に停止させる。支払いが再開されれば、機能を戻す。これで購入者の返済のモチベーションを上げる仕組みだ。

このワイヤレスの機能は、単なる資金回収以上に効果を発揮している。システムの稼働状況、顧客の電気の利用状況などを把握できるようにして、この情報をマーケティングに有効活用しているのだ。Mobisolの場合、これをベルリンでコントロールしている。世界は、全く新しい次元のビジネスモデルを可能とする時代に入ってきているということだ。

必要は発明の母という古い言葉は、ここにも当てはまる。イノベーションがイノベーションを生み出す循環が、アフリカで始まりつつある。

Powering Developing World with Solar?/Deutsche Welle/July 15, 2015
Solar Energy Lights Up Kenya/Deutsche Welle/July 8, 2015
Solar and Wireless/Deutsche Welle/Jan 28, 2015

【イノベーション】アフリカで進む「次世代型」教育支援ビジネス

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Bridge International Academiesのホームページから転載

途上国の教育支援とデジタルの新しい融合

途上国における教育支援をITを使って支援する試みは、これまで無数にあったが、成功事例は非常に少なかった。例えば、MITのネグロポンテ教授が推進したOLPC(One Laptopp Per Child)の100ドルパソコンが有名である。2005年頃に始まったこのプロジェクトは、小さなパソコンをアフリカ中の学校に配り、子供達の教育を支援するもので、多くのドナーの支援を受けて一世を風靡した。しかし、筆者がルワンダの学校で実際に見てきたところでは、残念ながらそのほとんどが使われておらず、校長室にある金庫に大切に保管されているだけであった。OLPCの活動そのものも、今や聞かなくなっている。

また教室などでパソコンを使い、映像で教育支援を行う仕組みも多く試された。実にたくさんの教育用コンテンツが巨額な資金を使って制作されてきたが、その成果は十分に発揮されたとは言いがたい。

こうした失敗の原因は多々あるが、共通と思われるものをあげると以下の3点となるであろう。1点目は、資金の不足である。小さな規模のプロジェクトが無数に生まれたが、基本的にドナーからの資金に頼っており、プロジェクトが終了すると資金不足に陥り、事業は終了となる。2点目がメンテナンスの難しさである。パソコンやらプロジェクターが故障すると修理できない。そのまま埃をかぶって放置されてしまうのが大半だ。3点目が教師の問題である。いくら立派な機材やコンテンツを渡されても、その利用法について十分な指導やフォローがなければ継続は難しい。

ケニアで始まり、ウガンダにも広がりつつあるBridge International Academiesは、そんな死屍累々の教育支援プロジェクトの欠点を補い、「次世代型」教育支援ビジネスに成功している。すでに12万人の子供たちを教えており、スタッフの数も5000人を超えている。

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Bridge International のユニークな点は、有料でサービスを提供していることだ。もちろん貧困者でも払うことができる少額だが、無料にはしない。授業料を払ってでも受けさせたい授業をつくることで、持続的な運営を目指している。

またコスト削減にも斬新なアイデアを導入している。基本的に一人の担当者が学校を回すシステムで、教師の負担を軽減するため、ITを活用したバックオフィスが全面的にサポートする仕組みとなっている。授業料の計算や回収は、モバイルバンキングで行い、教師が直接現金計算や管理を行うことはない。

さらに教室で教師が教える方法については、手元のタブレットが指導してくれる。簡単な操作で、授業の教え方がわかり、教師が準備する負担を軽くし、標準的な授業がどこでも行えるようにしている。

Bridgeモデルが実現できた背景には、データ通信の普及と低価格化、タブレットのようなデバイスの普及、モバイルバンキングによる少額オンライン決済の仕組みができたことがある。「次世代」教育支援ビジネスは、時代の変化と技術の発展を上手にビジネスモデルに組み込んでいるのだ。

今後は、もっと教師を負担を軽減し、誰でも先生になれるようなシステムが広がるであろう。また子供達の学習を細かくフォローする仕組みによって、効果的な学習管理の研究が進むに違いない。翻って日本の学校や塾の様子を見ると、IT化が遅れており、教師の負担も過剰なままだ。こういうアフリカの技術とコンセプトこそ、リバースエンジニアリングが必要なように思うが、いかがであろうか。

【スマートシティ】スマートな歩行者のための標識が「歩く街」をつくる

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 スマートシティのあり方を考える

Nestaがスマートシティのあり方を考える新しいレポートを出している。本レポートでは、スマートシティの歴史とこれまでの事例を概観しながら、これからのトレンドとしてCollaborative Technologies(市民協調的技術)のコンセプトを紹介している。

スマートシティには、国や行政がトップダウンで決定し、高いコストをかけて推進するプロジェクトが多く、コストに見合う効果を出せない事例も少なからずある。また、ハードウェアの技術に重点が置かれる傾向があり、ともすれば実際の市民のニーズを見落とすこともある。今、世界で広がりつつあるのは、市民側からのイニシアチブでスマートシティをつくろうとする動きで、そのキーワードは「協調」「オープン」「ボトムアップ」であるという。

このレポートで紹介している事例を、これからSPEでシリーズで紹介する。次世代のスマートシティのあり方について考える参考になればと思う。

「歩く」を促す街づくり

単純なアイデアが街を大きく変えることもある。そのことを考えさせてくれるのがアメリカのWalk [Your City]である。

日本では街を歩くことは普通であるが、アメリカや新興国などでは車社会が中心で、歩くことは二次的とも言えるのが実情だ。道路の標識は、基本的に自動車を運転する人の為に設置されていることがほとんどである。速度制限や駐車禁止などもそうであるが、行き先を示す標識も「◯◯まで3Km」という示し方で、自動車での移動を前提にしている。歩行者への配慮はあまりない。

Walk [Your City]は、その状況を「◯◯まで徒歩5分」といった歩行者のための標識を電柱などに括り付けて、歩きやすい街づくりをしようとする実にシンプルなアイデアだ。標識には、QRコードがあり、スマホなどで自分の位置や近隣の情報も得られるようになっている。

アイデアそのものは、あるいは画期的ではないかもしれない。画期的なのは、これを市民の側で自発的に考えて実施されたもので、それが世界中に広がるムーブメントとして広がったことだ。

行政が歩行者のための標識を街に設置することはある。しかし、それを実現するためには多くの手続きと高いコストがかかるのが通常だ。Walk [Your City]は、ビラを貼るのと同じ感覚で歩行者のための標識づくりを一夜で、低コストで実現してみせた。そしてこれを世界に広めたのはSNSによるソーシャル・メディアである。Walk [Your City]は、個人の実験として始まったが、今は法人化し、オーダーメイドで標識をつくり、発送するビジネスに発展している。

ホームページには、さまざまな都市のケーススタディが掲載されているが、それぞれがクリエイティブな方法で「歩く」街づくりを行っていて、人々のわくわく感が伝わってくる。

Walk [Your City]ホームページはこちら

「協調的な技術」を使う新しいスマートシティは、こうした一般の人々のわくわく感で築かれてくのだろう。目からウロコが落ちる思いである。

【ビジネスモデル】激変する社会で生き残るための新しい「戦略」のつくりかた

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「戦略」や「計画」の新しい方法論

「戦略」という言葉は、もともと軍事用語であった。クラウゼビッツの「戦争論」での議論が特に有名だ。戦略(あるいはそれに基いた計画)は、軍事的な用途だけでなく、いまやあらゆる分野で使われている。多くの企業や団体において中長期の戦略が練られ、計画が立てられている。「計画とおりに」という言葉は、ものごとが順調に進んでいることを示す、わかりやすい表現である。

しかし、昔ながらの戦略や計画づくりに対して、今、見直しの機運が高まっている。伝統的な戦略や計画は、諸条件が大きく変化しないことを前提につくられているが、現代のようにあらゆるものが変化し、また変化の予測が極めて困難な時代にあって「変化しない」ことを前提に戦略や計画を立てることは、まったく意味をなさなくなってきているからだ。

変化に対応する新しい「戦略」はいかにあるべきか。

ベンチャーの世界では「リーン・スタートアップ」という方法が紹介され、広まっている。効果を試すための最低限のリソースを投入し、短いPDCAのサイクルを繰り返す。市場の反応を分析し、効率的に製品・サービスの改善を図り、市場の反応次第では「ピボット」と呼ばれる大幅な作戦変更も辞さない。変化と不確定を前提とし、あいまいで見通しがつかない社会で、目標に向かって生き残るための方法を示している。

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少し古い記事になるが、Stanford Social Innovation Reviewでは、非営利団体の戦略的計画について、Monitor InstitutionのDana O’Donovan/COOとNoah Rimland Flowerが主張する新しい戦略づくりの方法論が紹介されている。

The Strategic Plan is Dead. Long Live Strategy./ Stanford Social Innovation Review Jan 10, 2013

新しい戦略づくりは、以下の3つの点で伝統的な戦略の方法論を置き換えていく必要があるとする。なかでも「データ収集」から「パターン認識へ」という点が興味深い。

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「予測(Prediction)」→「実験(Experiment)」

「トップダウン」→「チーム全体での意思決定」

上の2つは比較的イメージが湧きやすいが、「パターン認識」とは何であろうか。

「パターン認識」とは、

自然情報処理のひとつ。 画像・音声などの雑多な情報を含むデータの中から、意味を持つ対象を選別して取り出す処理である。 音声データから人間の声を認識して取り出し命令として解釈する音声認識、画像データの中から文字を認識してテキストデータに変換する(OCR)、大量の文書情報の中から、特定のキーワードを認識して文書の検索を実施する全文検索システム、などの技術がこのパターン認識に含まれる。(Wikipediaより抜粋)

著者のいう「パターン認識」とは、洪水のように溢れる大量のデータなかで「意味を持つ対象を選別して取り出す」ことに重点をおく手法という意味であろう。しかし、その方法論や実際に選別された意味を持つ対象をどう処理するかは、記事でも分からずもっと研究が必要だ。

また、変化を続ける環境の中で大事なことは、以下の自問自答を繰り返すことであるという。大きなビジョンを考え、攻めるべき分野や方法論について議論し、最後に保有しているリソースを見極める。そこで得た答えを手がかりに、更に自問自答をくりかえす。いったりきたりしながら方向性を見定め、継続的に調整を行う手法である。

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この方法で大事なことは(ここが一番難しいところでもあると思うが)、このサイクルを継続的に回転させるモチベーションや仕組みをいかにして築くかであろう。特に、目先で成功している時に、この問いを真摯な態度で組織が自己に発し、見直していくことは見かけほどはやさしくないはずだ。

社会は激動を続けているが、私個人のレベルでは「現状を維持したい」という根強い感覚(無意識的であっても)がある。私たちは「発明は必要の母なり」という言葉の深い意味を考えなければならないだろう。

【ソーシャル】オーストラリアのカフェ系ソーシャル・エンタープライズ

メルボルンのソーシャル・エンタープライズのひとつCharcol Laneから転載

メルボルンのソーシャル・エンタープライズのひとつCharcol Laneのホームページから転載。アボリジニの自立支援をレストランを通じて行っている。

オーストラリアのメルボルンでは、カフェやレストラン形態のソーシャル・エンタープライズがちょっとしたミニブームとのこと(Refugees welcome: inside Melbourne’s social enterprise cafe/ The Guardian July 15, 2015)。少なくとも13社が既に稼働していて、今後も増えていく見込みだという。内容を見てみると利益を発展途上国に100%還元するというところもあれば、人材育成を目的にするところもある。

中でも興味深いと感じたのは、社会的弱者を対象に人材教育に力を入れているところである。オーストラリアは移民を多く受け入れる国であり、アフリカやアジアなどからの移民や避難民が多いが、避難してきた途上国の若者が職を得ることは難しい。人種差別も残っている。先住民のアボリジニの人々も職を得るのは難しいという。その状況を改善するために、カフェやレストランで短期間雇用し、飲食業で働くための基本的なスキルを身につけさせ、社会で自立できるようにしているのがソーシャル・エンタープライズが増えてきているのだ。

Charcoal Laneは、地元の食材を生かした料理でを出す地元のレストランであるが、アボリジニの若者への支援と飲食業で仕事するためのスキルとトレーニングの機会を提供している。ホームページの写真を見る限り、とても上品でありながらアットホームな感じのする店内で、こうしたところで訓練を受けたということであれば、次の職探しにもプラスとなるであろう。

Long Street Coffeeは、2015年6月にオープンしたばかりだが注目を集めている。ここでは、アフリカなどの途上国からの移民や避難民を対象にカフェでのオンザジョブ(On the Job)トレーニングを目的にカフェを開いた。創業者のFrancois and Jane Marx夫妻は、2014年に2名の若い避難民を雇って、アートフェスティバルに出店を出すことからスタートした。その後、クラウドファンディングで集めた資金と自分たちの貯金を元手に、ガレージを改装してカフェをオープンした。現在、ガンビア、イラン、マレーシアからの移民3名を6ヶ月間雇用して、訓練を行っている。いずれもオーストラリアに来て、初めての職だ。

It’s one thing to accept that asylum seekers come here, and accept that they are refugees, but it’s a whole other thing to expect them to somehow create a life for themselves when they can’t find employment despite all their best efforts,” Jane says. “We want to uphold the Australian value of a fair go.

「亡命希望者にオーストラリアに来ることを認めて避難民として受け入れることと、彼らがここで職を見つけて生活を築けるかどうかは全く別の話だ。実際、どんなに努力しても職が見つからない。私たちはオーストラリアのfair go(公平にチャンスを与えること)の価値を守りたい」とJaneさんは語る。

Broadsheet.comの記事より/ Long Street Coffee Opens in Richmond

メルボルンへ立ち寄ることがあれば、是非、こうしたレストランやカフェを訪ねてみて頂きたい。

【イノベーション】よいアイデアが普及することの難しさ:空中から二酸化炭素を回収

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良いアイデアと良いビジネスモデルの間にあるギャップ

素晴らしいアイデアは、世界中の研究者などから生まれている。新しい発電装置や蓄電池、生命科学を応用した新技術、ナノテクノロジーを応用した新素材など、分野も対象も多種多様である。しかし、こうした新しい技術なりアイデアが実際に世の中に普及し、使われるようになるには多くの難関を乗り越えていく必要がある。

アイデアが実証されるかどうかというテクノロジー・リスク、製品として成り立つかかどうかの製品化リスク、さらには商品として実際に売れるかどうかのマーケティングリスクなど、多くの山や谷が待ち構えているのである。基礎技術の場合、その実証に長い時間が必要だ。そのあとのプロセスも、人々の生活を変えるインパクトを持つ技術であればあるほど、その実現に長期間を要する可能性が高い。

欠かせないのは、そうしたプロセスに伴うコストを賄う資金であり、サステナブルな事業を築くためのビジネスモデルだ。カネの切れ目が、技術開発の切れ目となるケースがとても多い。特に短期間で成果を出すことが求められるビジネス社会においては、長期にわたる基礎技術の開発は非常に難しくなっている。

例えば、The Guardian紙で紹介している「空気中から二酸化炭素を直接回収する技術」がある。空気中から二酸化炭素を直接取り除くことで、温暖化対策に貢献するというアイデアである。大きなフィルターに空気を通し、溶解液などで二酸化炭素を抜き出して、抜き出した二酸化炭素を合成燃料などに使用するもの。工場のように一カ所で処理できない車や飛行機などが排出する二酸化炭素を空気中から直接取り出して分離しようとする技術である。

現在、これを研究開発し普及しようとするいくつかのベンチャー企業により各地でパイロット事業が行われている段階だ。カナダのカルガリーをベースにするCarbon Engineerはビル&メリンダ・ゲイツ財団からの支援を受けて事業化を進めており、スイスのClimeworksは自動車メーカーのアウディ(Audi)から資金を調達している。またニューヨークを拠点にするGlobal Thermostats社も米国のエネルギー関連企業からの資金調達を受ける見込みと言われている。

どの企業も直面しているのが、サステナブルなビジネスモデルの構築だ。この技術が温暖化対策の効果的な手段となるには、何千億円という投資が必要となり、そのコストを払おうという政府や国際機関は現れていない。回収した二酸化炭素を商業用に利用するとしても、まだ規模が小さすぎて事業を継続させるまでには至らない。長期的にビジネスの機会を伺うための、短期的な資金の調達がどの企業にとっても喫緊の課題だという。

日本でも、多種多様な基礎技術の開発に対して政府は後押しをしようとしており、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)やJST(科学技術振興機構)などを通じてバックアップのプログラムが展開されている。パイロットまで持っていくことは比較的やさしいが、ビジネスとして普及させる戦略構築の可否、それを行うことのできる人材の確保が今後の明暗を分けるであろう。

ご参考:Startups have figured our how to remove carbon from the air. Will anyone pay them to do it? / The Guardinan July 14, 2015

【ソーシャル】カメルーンのソーラー発電による給水システムの意外な成果

A pioneering solar-powered water project has allowed villagers in Cameroon’s arid north to start small businesses. Photograph: imageBROKER/Alamy

A pioneering solar-powered water project has allowed villagers in Cameroon’s arid north to start small businesses. Photograph: imageBROKER/Alamy

飲み水の安定的な供給が生み出す好循環

カメルーンの北部地域の深刻な水不足を補うために設置されたソーラー発電による地下水の給水システムが思わぬ成果を出して注目されている。The Guardianの記事を紹介する。

この地域は降水が不安定なため、慢性的な水不足に陥っており、汚水を飲み水にするための病気が蔓延している。加えて、ボコハラムによる避難民の流入も増えて、事態は非常に悪化していた。カメルーンのNGOであるThe Center for Environment and Rural Transformation (Cerut)は、ソーラー発電で地下水を汲み上げるシステムを作り、パイプを通じて近隣の村々に飲み水を供給する仕組みをつくった。太陽光が強いこの地域では、一日に4万リットルの水を汲み上げることができるという。村民の水不足は解消し、病気で苦しむこともなくなった。

このシステムのユニークなところは、地下水を汲み上げるポイントをひとつにしてメンテナンスのコストを下げていることだ。そこから40カ所ある給水ポイントへ水を流し、各給水ポイントで水を貯める。各家庭は、この給水ポイントから手動で動く簡単なポンプを使って水を家庭用の容器にいれて持ち帰る。維持費用や設置のコストを人々のキャパシティに対応してバランスを取った仕組みになっている。

興味深いのは、水を得た農民たちの利用法だ。Cerutは政府の協力も得て、200名の女性に助成金を支給し、自営のビジネスを始めることを奨励した。水を汲むための長い時間の拘束から解放され、自由な時間を得たことで、現金収入を得るための新しい仕事ができるようになった。

中でも地ビールの生産が伸びているという。この地域ではビールづくりに必要なミレットの収穫が水の安定的な供給により4倍に増えたことに加え、原料となる水の安全性が確保でき、需要が大きく高まっているのだ。連鎖的な悪循環を断ち切り、好循環に変えていくシナリオが見えてきた。

ソーラー発電システムの単価が劇的に低くなってきていることから、こうしたソリューションは今後も増えてくだろう。バングラデシュでも、ソーラー発電を利用した灌漑システムを政府が後押しして広がっている。

Beer and Business: the unexpected benefits of water access in Cameroon/ The Guardian July 7, 2015

【ビジネスモデル】リバース・イノベーションを成功させる5原則

リバース・イノベーションで失敗しないための5原則

リバース・イノベーションとは、新興国のためにデザインした製品やサービスに改良を加え、先進国の市場で販売するコンセプトである。

2015年7月号のHarvard Business Reviewにリバース・イノベーションを最初に提唱したVijay GovindarajanとAmos Winterが、これまでのさまざまな企業の実績を踏まえ、リバース・イノベーションで陥りがちな5つの罠と成功させるための5つの原則を論じている。少し長くなるが紹介したい。

陥りがちな罠1:(先進国向けの)既存の製品をそのまま新興国に売ろうとすること

既存の製品やサービスをベースに改良を加えて新興国の市場に売り出すことが一番簡単でリスクが少ないように思われるが、実はこの方法では買い手はつかない。実際のニーズと合わないことが多いのだ。

デザイン原則1:まず問題の本質を理解せよ

既存の商品をどう売るかではなく、途上国のユーザが直面している課題の本質を理解し、具体的なニーズを把握することが先決。新興国の固有の問題やニーズに焦点を充てて研究すべきである。

陥りがちな罠2:機能を落として価格を低くすること

既存製品やサービスの機能を落として価格を低くすることこそ新興国へ進出する方法だと勘違いする企業が多いが、これは間違いである。新興国のユーザも高い機能を求めている。

デザイン原則2:新興国に固有の設計自由度を生かして最適な設計を目指す

機能を落とすという発想ではなく、新興国に固有の設計自由度を生かして最適なデザインを目指すべきである。先進国では見当たらないものや使うことのない技術でも、新興国では最適に機能することもある。新興国の固有の環境の中で、いかに最適な方法を見いだすかが大切。

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陥りがちな罠3:技術的な要件を徹底的に検討することなく設計すること

導入しようとする製品やアイデアが現実的に機能するかどうかの技術的な検討が不徹底で、重要な点が見過ごされたことで失敗に終わるケースが多い。

デザイン原則3:消費者の課題の背景にある技術的な要件を全て分析すること

先進国の常識で状況を判断するのではなく、新興国に固有の状況を徹底的に分析することが大切。例えばトラクターを導入する際には、新興国の状況に合わせて軽量にする必要があるが、農作業での状況を分析するだけではなく、人の運搬にも使うというような当地の使い方にも目を配るべき。

陥りがちな罠4:ステークホルダーに無関心

企業によっては、新興国に数日間滞在し、それで全てが分かったように思うところがあるが、それは間違いである。

デザイン原則4:できるだけ多くのステークホルダーとテストすること

ユーザだけではなく、つくる人、売る人、買う人、修理する人、廃棄する人のように、できるだけ多くのステークホルダーを巻き込んでテストを行うべき。また、設計する時には「ユーザのため」というより「ユーザと共に」という態度で協働する姿勢で臨んだ方が良い。

陥りがちな罠5:新興国向けのデザインが先進国で受け入れられるとは信じないこと

先進国の消費者はブランド志向が強く、途上国から製品には関心がないと考える。あるいは逆に既存製品の強剛になると恐れることは間違いである。

デザイン原則5:新興国で直面する制約をバネに世界に通じる製品をつくる

途上国のさまざまな制約は、それを乗り越えるために技術のブレークスルーが生まれる可能性がある。制約のある環境でデザインした製品をベースに、先進国の仕様や嗜好に合わせて改良することで、高性能で低価格の商品を先進国で販売することができる。

リバース・イノベーションの事例は、まだ多いとは言えないが、新興国の発展が勢いをつけていくなかで、大企業にとっても無視できない戦略となるであろう。記事では、多くの事例を挙げて上記の5つの原則を開設している。途上国の社会課題を解決する多くのイノベーションが生まれてくることを期待したい。

“Engineering Reverse Innovations” by Vijay Govindarajan &Amos Winter/ Harvard Business Review July-August 2015

【ソーシャル】データ・フィランソロピィで社会に貢献!

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ロイヤルティ・プログラム(優良顧客に対して特典を提供するプログラム)の世界的リーダーであるAimia社は、保有している顧客のロイヤルティに関する専門知識と世界中の人材や経験を生かして、非営利団体の経営改善に役立つ社会貢献を行っている。

非営利団体の持つデータを解析し、より良い事業活動の提案を行うことで、社会課題の解決に貢献することが目的だ。これを「データ・フィランソロピィ」と呼んでいる。この活動は、今年のThe Guardian Sustainable Business Award の社会インパクト部門で大賞を受賞し、The Guardian紙に関連記事が掲載されているのでご紹介したい。

始まったのはイギリスからだ。Aimia社の傘下にあるNectar社(イギリスのロイヤリティ・プログラムのトップ企業)が取り組んでいる。同社のデータ分析の専門家達がプロボノで働き、過去2年間でのべ15,000時間を費やし、50以上のチャリティ団体を支援。また活動資金として250万ポンド(約5億円弱)の調達にも成功しているとのこと。

例えば、若いホームレスを支援する非営利団体に対しては、12ヶ月のプロジェクトに40人の専門家が参加し、ホームレスの若者に関するデータを解析。ホームレスを支援するプログラムの有効性について分析・評価し、より効果的な介入(intervention)を提案している。

若者のスポーツ振興を行う非営利団体では、コーチの働く仕事の30%が情報整理のためのデスクワークであることが判明。タブレットなどを活用した効率的な情報収集のシステムづくりに取り組み、コーチがもっと多くの時間を子供たちに充てられるように改善した。

本活動の対象となるのは、データ分析に必要な情報量を保有している比較的大きな非営利団体に限られるが、せっかく蓄積した大量のデータを十分に生かせない団体においては、組織の効率化や有効なプログラムの企画・評価という点で、大きな成果を生み出す可能性がある。

またこれは一方的な慈善活動ではなく、Aimia社にとっても、会社の信用を高め、従業員の経験と訓練の機会ともなり、企業としてのメリットも大きいという。

現在、イギリス以外にもアメリカ、オーストラリア、カナダと活動を広げており、今後は更に拡大する方針とのこと。「データ・フィランソロピィ」というビジネスと社会貢献のベクトルが一致するこのモデルには、サステナブルな社会を構築するための大切なヒントが含まれているように思われる。

Aimia Harnesses the Power of Data Insight for Social Good/The Guardian