【エネルギー】モロッコにおける再生可能エネルギー開発の勢い

Ain Beni Mathar Integrated Combined Cycle Thermo-Solar Power Plant/World Bank Photo Collection

Ain Beni Mathar Integrated Combined Cycle Thermo-Solar Power Plant/World Bank Photo Collection

2020年:国の発電量の42%を再生可能エネルギーで!

モロッコといえば、多くの人が映画「カサブランカ」を思い出すであろう。ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマンが主演するこの名作は、映画で使用された「As Times Goes By」の曲とともに、観た人の心に強く印象を残す。

日本の面積の1.2倍の国土に、約3300万人の人口を抱えるモロッコは、農業(麦類、ジャガイモ、トマトなど)と漁業(タコ、イカ、鰯など)が盛んな農業国で、アフリカで5番目に大きな国内総生産を誇っている。フランスの影響を強く受けたアラブの文化は、エキゾチックなイメージを醸し出し、多くの日本人観光客を引き寄せている。

さて、モロッコは今、再生可能エネルギーを中心としたエネルギー政策への大転換を推進している。モロッコは日本と同様に、石油や天然ガスなどの天然資源を持たないため、現状、国のエネルギーの実に9割以上を海外からの輸入に頼っているのだ。経済が毎年4%〜6%のペースで成長し、エネルギーに対する需要が大きく増加していることから、安定したエネルギー生産は喫緊の課題である。エネルギーにかかる国民への助成金も巨額で、財政に大きな負担となっている。

その抜本的な対策として、モロッコ政府は2020年までにエネルギー総生産量の42%を再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力)でまかなう長期計画を打ち立てた。太陽光発電と風力発電のそれぞれで2000MWの発電量を目標にする。これは二酸化炭素の排出量も大きく削減する効果もある。

すでに大掛かりな開発プロジェクトが次々と開始されており、世銀をはじめ、欧州系の開発銀行がファイナンスを行っているほか、民間投資も活発になっている。中でも中東諸国からの投資が大きくなっているようだ。

世界銀行 (2014/9/30):Expansion of Morocco’s Largest Solar Complex to Provide 1.1 Million Moroccans with Clean Energy

Forbes (2015/4/27) : Morocco Continues its Renewable  Push with Saudi-backed Wind Projects

再生エネルギーへの投資金額も急速に伸びている。投資額は2012年の3億ドル弱から、2013年の18億ドルへと大きく伸びている。こうした投資と開発により、モロッコは中東・北部アフリカ地域における再生エネルギー分野の最先端をいくリーダー的な存在に成長しつつあり、欧州へのエネルギー輸出も視野に入れている。

Climate Policy Observer (2015/7/28): Renewable Energy Deployment in the MENA: a regional overview

日経新聞 (2011/9/20): モロッコが再生エネルギーを輸出へ:太陽エネルギー庁長官に聞く

日本への技術協力の期待も高く、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)とも技術提携し、基本調査が行われている。また風力発電プロジェクトの一部に三井物産も受注を受けているようだ。

天然資源がないからこそ、新しい分野の導入が進みやすい。いわゆるリープフロッグ型発展の典型のようなパターンだ。モロッコは2016年のCOP22のホスト国でもある。まだいろいろな課題や制約が残っているようだが、モロッコのエネルギー政策の進展にも注目しておきたい。

【イノベーション】進化するアフリカのソーラー・システム

Deutsche Welleの記事より転載

Deutsche Welleの記事より転載

資金回収の課題を乗り越えて進む自家用ソーラーシステム

無電化の地域に自家用のソーラー・システムを入れる動きは、バングラデシュなどで広く普及している。バングラデシュでは政府の推進もあり、現在、実に100万世帯がソーラー・ホーム・システムで電化されてる。

このような爆発的な普及が実現した理由は、ソーラー・パネルの値段が劇的に低くなったことや、LED電球のような省エネ家電が普及し小さな発電量でも使い道が画期的に広がったことなどが挙げられるが、最も大きな推進力はファイナンスであろう。低所得者でも手が届くように、分割払いの方法を取り入れ、購入者の初期投資にかかる資金負担を軽減した。毎月の少額返済を1年〜2年続けて完済するとシステムは100%購入者のものになる。こうした仕組みのバックファイナンスを世銀などの国際機関などが政府を通じて支援している。

分割払いの方法は、バングラデシュではマイクロファイナンスの仕組みとネットワークがお膳立てした。現在、バングラデシュで最も販売量多いソーラー・ホーム・システムの会社がグラミンバンクのグループ企業やBRACのグループであることは偶然ではない。

しかし、バングラデシュで成功したこのモデルを、アフリカにそのまま持ち込むことはできない。一番のネックは資金の回収だ。南アジアのような人口密度の高いところでは、資金の回収は人手を使ってきめ細かく行うことができる。1㎢あたり1000人もいれば、1日で多くの顧客を回ることができる。しかし、アフリカではそうはいかない。家と家の間が数キロ離れていることもざらだ。こういうところでは、資金回収にかかるコストが高すぎて採算が合わないのだ。

この課題を解決する糸口を与えたのはモバイルのネットワークとM-Pesaのようなモバイル・ファイナンスの普及だ。アフリカでも、いまやモバイル・ネットワークは広く普及し、どこへ行っても携帯電話は通じるようになっている。また、モバイル・ファイナンスでは、銀行口座を持たなくても携帯電話で資金決済(送金・入金)や貯蓄ができるようになった。こうした新しいインフラが、アフリカの自家用ソーラー・システム(現地ではpico-solar systemと呼ぶ)の普及に新しい推進力をもたらすことになった。

Deutsche Welleの記事より転載

Deutsche Welleの記事より転載

例えば、ケニアをベースにしているM-KOPAやドイツのベンチャーであるMobisolなどである。今、アフリカの東部地域を中心に大きく成長している注目の自家用ソーラー・システムのベンチャー企業である。どちらのモデルも、資金の回収をモバイル・ファイナンスで行っており、顧客との現金のやりとりはなく、資金回収のための人件費が必要ない。これにより大幅なコストダウンを実現し、また資金管理を効率化した。

では未払いとなる顧客への対応はどうするのか。ファイナンスでは、かならず滞納する人々が存在し、その対応に相当の手間とコストが必要となる。両社は販売するシステムのそれぞれにSIMを挿入し、ワイヤレスで1件1件のシステムをセンターで管理できる仕組みを開発し、この最大の問題を解決している。支払いが滞った顧客のシステムは、遠隔から自動的に停止させる。支払いが再開されれば、機能を戻す。これで購入者の返済のモチベーションを上げる仕組みだ。

このワイヤレスの機能は、単なる資金回収以上に効果を発揮している。システムの稼働状況、顧客の電気の利用状況などを把握できるようにして、この情報をマーケティングに有効活用しているのだ。Mobisolの場合、これをベルリンでコントロールしている。世界は、全く新しい次元のビジネスモデルを可能とする時代に入ってきているということだ。

必要は発明の母という古い言葉は、ここにも当てはまる。イノベーションがイノベーションを生み出す循環が、アフリカで始まりつつある。

Powering Developing World with Solar?/Deutsche Welle/July 15, 2015
Solar Energy Lights Up Kenya/Deutsche Welle/July 8, 2015
Solar and Wireless/Deutsche Welle/Jan 28, 2015

【エネルギー】グリーン経済へ向けて:世界の投資動向

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クリーンエネルギーや省エネ、環境に優しいインフラ施設など、サステナブルな社会と地球環境を目指すグリーン経済への投資が世界的に増えてきている。対象が異なる2つのソースから世界の動向を見ていきたい。

グリーン経済への民間投資は年間110兆円

Strategic Sustainable InvestmentのTimothy Nash氏によれば、グリーン経済への民間投資は2007年以来の累計で770兆円を超えているという。これは再生可能エネルギー、グリーン・ビルディング、スマート・グリッド、エネルギー効率が高い上下水施設、あらゆる種類のクリーン・テクノロジーズへの投資の累計で、クリーン石炭など「つけ刃」的な技術への投資は除いている。

本件記事はこちら:Does $6.2 trillion in green investment matters to global economy? 

年間ベースで見ると2008年のリーマンショック時に大きく減ったあとは、徐々に投資額が増加している。2014年の実績では8,790億ドル(約110兆円)と2008年時の倍の額に迫ろうとしている。

SocialFinance.caから転載

SocialFinance.caから転載

この規模感だが、世界の2014年における年間の民間投資額総計が16兆ドル(約2095兆円)に対しては5.2%、石油・石炭関係への民間投資額(2013年)が約1兆ドル(約124兆円)なので、今や石油・石炭関連を追い抜く勢いだ。

急速に増加するクリーンエネルギー市場:中国が牽引

また、クリーンエネルギーに対象を絞ったBloomberg New Energy Financeによれば、公共・民間の両方を合わせた世界のクリーンエネルギーに対する投資額は3100億ドル(約38兆円)となっている。2011年のピーク時よりは低い水準ながら、2013年対比16%の伸びであり、過去10年間で5倍の額に増加しているという。

世界で最もクリーンエネルギーへの投資額が大きいのが中国で895億ドル(約11兆円)。次いで米国が518億ドル(約6.4兆円)、日本は413億ドル(約5.1兆円)となっており、ブラジル、インド、南アフリカなどの伸び率も高い。欧州全体では660億ドル(約8.2兆円)である。こうした投資額の半分が太陽光発電関連であり、次が風力発電となっている。

最新のデータはこちらを参照:Global Trend in Clean Energy Investment 2015Q1

環境汚染で悪名の高い中国が、世界で突出してクリーンエネルギーへの投資額が大きいのは意外に思われるかもしれないが、近い将来、グリーン経済の分野でもリーダー的な存在に変わる可能性もある。

また太陽光発電の伸びは、途上国において大きく、大きなインフラ投資もあるが、家庭用の太陽光発電装置が急増している。こうした家庭用のソーラー発電装置の急速な普及は、無電化地域の削減に大きく寄与しており、世界の様子を激変させている。

こうした大型の投資の多くがアセットファイアンス(Asset Finance)で行われている。こうしたファイナンスの手法の確立も、投資急増に一役を買っていると思われる。これについては、別途、お伝えしたい。

【エネルギー】ドイツの脱原発、脱火力発電の現状

Deutsche Welle (DW)のホームページより転載

Deutsche Welle (DW)のホームページより転載

進む代替エネルギーの活用/進まない脱火力発電

ドイツ政府は、4年前の2011年6月30日、東日本大震災を受けて、稼働している17の原発を2022年までに全て停止とすることを決定した。直ちに8基の原発が稼働停止となり、先月9基目の原発が停止となっている。

ドイツの長期目標として、2050年までに再生可能エネルギーが発電量に占める割合を80%まで引き上げることを目指しており、ガスや石炭による発電も割合を落としていく方針だ。ドイツにおける気候変動に関する関心の高さと議論は、日本では想像がつかないほど真剣で、促進派も反対派も、政策における優先度は高い。

脱原発宣言をしてから4年が経過した現状をDWが記事にしているのでご紹介致したい。

Deutsche Welle (DW)のホームページより転載

Deutsche Welle (DW)のホームページより転載

上記のグラフのとおり、再生可能エネルギーの占める割合が大きく増加した。4年前から11%増の28%となっており、原発とガスによる火力発電を置き換えている様子がわかる。ちなみに日本は5%程度である。一方、石炭による火力発電の割合は43%で変化なしとなっている。

ドイツは2020年までに1990年対比40%の二酸化炭素輩出量を削減する必要があり、火力発電の削減は喫緊の課題となっている。この対策として、ドイツ政府は二酸化炭素排出量の大きい非効率な火力発電所に対して、気候税(Climate Levy)の導入を現在検討している。

利害の激しい対立

このような政策は、当然のことながら激しい対立を生み出している。原発や火力発電を運営していた電力会社はエネルギー政策によるビジネスの損失を国に負担させるべく動いており、気候税については、火力発電所の従業員組合や石炭の坑夫組合の猛烈な反対がある。一方、これに対抗してグリーンピースのような環境保護団体が、大きなデモを展開するといった具合だ。

脱原発の問題は、発電所を廃炉にするということだけでは済まない。核廃棄物の安全な処理という大きな課題が残る。核廃棄物を数百万年にわたって格納する場所と方法を見いだして処理を完成するには30年〜80年を要すると言われている。電力会社は360億ユーロ(約4兆9千億円)を原発の廃炉と核廃棄物の処理費用として積み立てているが、実際の費用は500億〜700億ユーロになる可能性を指摘する論者もいる。その場合、国家と国民への負担は非常に大きいものとなる。

ドイツの無謀にも見える挑戦が、どのように推移するのか。世界は固唾をのんで注目している。

How far along is Germany’s nuclear phase out? / Deutsche Welle June 29, 2015