グリーンケミストリー(Green Chemistry)とは
グリーンケミストリーという言葉は、日本では一般にあまり馴染みがないものかもしれない。化学物質による環境汚染を防止し、生態系や人体への有害な影響を最小限に抑えることを目指した化学のことで、1990年代からアメリカを中心に提唱され、世界的に広がったコンセプトである。
このグリーンケミストリーの中核をなす考えは、Paul AnastasとJohn Warnerが1998年に発表したGreen Chemistry: Theory and Practiceという著作の中で提唱した12原則(12 Principles of Green Chemistry)にある。原則の中には、廃棄物はできるだけ出さない(第1原則)、無害な化学製品の設計(第4原則)、有害な溶剤や補助剤をできるだけ使わない(第5原則)といったものが含まれる。詳しくは、以下のサイトをご参照願いたい。
米国環境保護庁(United States Environmental Protection Agency):Basic of Green Chemistry
日本では1999年にグリーンケミストリー研究会が日本化学会の中に結成され、2000年には産官学連携による「グリーン・サステナブル ケミストリー ネットワーク」が設立されて、現在GSCN会議として、新化学技術推進協会の中で活動が展開されている。
グリーンケミストリーをめぐる新しい動き
グリーンケミストリーは米国に始まり、欧州や世界各国で具体的な法や規制となって形を成してきたが、産業界における推進の動きは遅かったと言われている。Green Chemistry & Commerce Councilが2015年3月に公表したAdvancing Green Chemistry: Barriers to Adoption & Ways to Accelerate Green Chemistry in Supply Chainsによれば、その原因はグリーンケミストリーの定義が不確定なこと、サプライチェーンの複雑さ、新しい化学製品へ移行するためのリスクやコストなどが挙げられており、ステークホルダー間のより一層のコラボレーションや、小売や消費品メーカーからの要請、消費者への教育などを改善策として提言している。
そんな中、アメリカの大手小売チェーンや消費製品メーカーに新しい動きが出ている。例えば米国最大の小売チェーンであるWalmartやTargetといったスーパーで、グリーンケミストリー製品を購入する自主ガイドラインを2013年から導入している。政府による法や規制では合法でも、自社の基準にそぐわない場合には購入しないというもので、メーカーに対して強い圧力となる。またジョンソン&ジョンソンが自主的に有害とされるフタル酸エステルを使用しない方針を決めた。
A Toxic Situation: Walmart and Target take on Chemical Safety, The Guardian, 2013年12月13日
こうした動きは、今まで足踏み状態であったグリーンケミストリーの動きを加速することになるであろう。需要サイドからの圧力を受けて、生態系や人体に優しい、無害な化学品への技術革新やイノベーションが生まれる基盤が整いつつある。

