「戦略」や「計画」の新しい方法論
「戦略」という言葉は、もともと軍事用語であった。クラウゼビッツの「戦争論」での議論が特に有名だ。戦略(あるいはそれに基いた計画)は、軍事的な用途だけでなく、いまやあらゆる分野で使われている。多くの企業や団体において中長期の戦略が練られ、計画が立てられている。「計画とおりに」という言葉は、ものごとが順調に進んでいることを示す、わかりやすい表現である。
しかし、昔ながらの戦略や計画づくりに対して、今、見直しの機運が高まっている。伝統的な戦略や計画は、諸条件が大きく変化しないことを前提につくられているが、現代のようにあらゆるものが変化し、また変化の予測が極めて困難な時代にあって「変化しない」ことを前提に戦略や計画を立てることは、まったく意味をなさなくなってきているからだ。
変化に対応する新しい「戦略」はいかにあるべきか。
ベンチャーの世界では「リーン・スタートアップ」という方法が紹介され、広まっている。効果を試すための最低限のリソースを投入し、短いPDCAのサイクルを繰り返す。市場の反応を分析し、効率的に製品・サービスの改善を図り、市場の反応次第では「ピボット」と呼ばれる大幅な作戦変更も辞さない。変化と不確定を前提とし、あいまいで見通しがつかない社会で、目標に向かって生き残るための方法を示している。
少し古い記事になるが、Stanford Social Innovation Reviewでは、非営利団体の戦略的計画について、Monitor InstitutionのDana O’Donovan/COOとNoah Rimland Flowerが主張する新しい戦略づくりの方法論が紹介されている。
The Strategic Plan is Dead. Long Live Strategy./ Stanford Social Innovation Review Jan 10, 2013
新しい戦略づくりは、以下の3つの点で伝統的な戦略の方法論を置き換えていく必要があるとする。なかでも「データ収集」から「パターン認識へ」という点が興味深い。
「予測(Prediction)」→「実験(Experiment)」
「トップダウン」→「チーム全体での意思決定」
上の2つは比較的イメージが湧きやすいが、「パターン認識」とは何であろうか。
「パターン認識」とは、
自然情報処理のひとつ。 画像・音声などの雑多な情報を含むデータの中から、意味を持つ対象を選別して取り出す処理である。 音声データから人間の声を認識して取り出し命令として解釈する音声認識、画像データの中から文字を認識してテキストデータに変換する(OCR)、大量の文書情報の中から、特定のキーワードを認識して文書の検索を実施する全文検索システム、などの技術がこのパターン認識に含まれる。(Wikipediaより抜粋)
著者のいう「パターン認識」とは、洪水のように溢れる大量のデータなかで「意味を持つ対象を選別して取り出す」ことに重点をおく手法という意味であろう。しかし、その方法論や実際に選別された意味を持つ対象をどう処理するかは、記事でも分からずもっと研究が必要だ。
また、変化を続ける環境の中で大事なことは、以下の自問自答を繰り返すことであるという。大きなビジョンを考え、攻めるべき分野や方法論について議論し、最後に保有しているリソースを見極める。そこで得た答えを手がかりに、更に自問自答をくりかえす。いったりきたりしながら方向性を見定め、継続的に調整を行う手法である。
この方法で大事なことは(ここが一番難しいところでもあると思うが)、このサイクルを継続的に回転させるモチベーションや仕組みをいかにして築くかであろう。特に、目先で成功している時に、この問いを真摯な態度で組織が自己に発し、見直していくことは見かけほどはやさしくないはずだ。
社会は激動を続けているが、私個人のレベルでは「現状を維持したい」という根強い感覚(無意識的であっても)がある。私たちは「発明は必要の母なり」という言葉の深い意味を考えなければならないだろう。




